
「ミラーニューロンシステムとその機能不全の結果」
世の中にはモノマネが上手な人と下手な人がいます。
モノマネの上手な人というのはお調子者というか、周りの空気を呼んでうまくやる、いわば社会性が高いような印象がありますが、モノマネ能力と社会性というのは果たして関係があるのでしょうか。
今日取り上げる論文はミラーニューロンと社会性の関係について述べたものになります。
ミラーニューロンというのは別名モノマネ細胞とも言われていて、人間の模倣能力と大きな関わりがあると言われています。
ごくごく簡単に説明すると目に見えた情報をそのまま運動情報に変換するようなシステムなのですが、これは模倣だけでなく、相手の心を読んだり意味を組んだりという能力にも関係することが知られています。
この論文ではミラーニューロンと自閉症の関わりについても述べられているのですが、ミラーニューロンの活動が低いほど模倣能力が低く、また自閉症が重症化する傾向があることが示されており、やはりこのミラーニューロンというのは相手の心を読み取る上で重要なものではないかということが述べられています。
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【要約】
マカクザルで発見されたミラーニューロンは、運動前野と頭頂葉の神経細胞から構成されている。この神経細胞は自分がある動作をしている時だけでなく、他者がその動作を行っているのを観察している時も活動することが知られている。このミラーニューロンに関する神経生理学的メカニズムによって模倣から共感まで様々な社会行動を説明しうると考えられる。近年の研究によりヒトのミラーニューロンシステムの障害が自閉症の中核的原因であることが示されている。本稿ではミラーニューロンシステムに関する神経生理学的研究とその社会的認知への関わりについて調べた研究の総括を行い、このミラーニューロンシステムの機能不全と臨床症状の関係について論じる。
参考URL:The mirror neuron system and the consequences of its dysfunction.
コメント
もう少し詳しい話をすると
正確にはミラーニューロンではなくミラーニューロンシステムです。というのもどこか単独の神経細胞が働いているわけでなく、脳の中のいろんな領域が組み合わさって構成されているからです。
その中でも重要な領域として言語中枢としても知られるブローカ野があるのですが、模倣能力の高い人はこの領域も模倣している時によく働くそうです。
マインドリーディングという言葉があるように英語でも日本語でも心を読むとは言いますが、模倣や心の理解に言語領域が関わっていることに関係があるのかなと思いました。
文章を理解するにしても、空気を読むにしても、文脈を読み取る、構造を読み取る、前後関係を読み取るという部分は同じで、その辺がミラーニューロンなりブローカ野なりの肝かなと思っています。