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「感情に関わるメンタライジングと共感との関係性」

世の中には言いづらいことがいっぱいあります。

恋人に別れを切り出す時、
部下に解雇を言い渡す時、
上司にミスを報告する時、

いろんな言いづらいシチュエーションがあると思うのですが、これはひとえに相手のリアクションを想像してしまうからでしょう。

優しい人は前もってあれこれ相手の感情、相手のリアクションを想像してしまい、それゆえ何かを切り出しにくいというのがあるかもしれませんが、相手の感情を推し量っている時にはいったい脳はどのように働いているのでしょうか。

今日取り上げる論文は相手の感情を予測している時の脳活動を調べたものです。

結論を述べると相手のリアクションを想像している時は、あたかも自分がそんなふうに感じているかのような脳活動が起こり、これは共感能力の高い人ほど顕著であったそうです。

つまり共感能力の高い人ほど相手の感情をあたかも自分の感情のように感じ取ってしまい、それゆえ優しい人というのは本当のことを言い出すハードルが高くなるのかなと思いました。

【要旨】
メンタライジングとはその人が何を考えているかという知識に基づいて相手の行動を予測する技術である。メンタライジングでもより高度なものは相手の考えがその感情にどれくらい影響を与えているかまで考慮する。近年の研究によってこのメンタライジング能力は共感能力との結び付きが強いのではないかということが言われている。しかしながらメンタライジング能力の中でもどの部分が共感との関連性が強いのかについては明らかにされていない。本研究では被験者にイラストを見せ登場人物の心理を推測させる課題を行わせた。実験では間違ったことを信じている人に本当のことを教えた時、相手がどのような気分になるかを想像させる課題を行った。結果相手の気分を想像している時は上側頭溝、内側前頭前野、側頭極、体性感覚関連皮質、下前頭回、視床に活動の増加が認められた。とりわけ共感能力が高い人に関しては右体性感覚関連皮質と両側の視床に活動の増加が目立った。これらの結果から他人の感情を予想する時には自分自信の感覚情動システムを駆動すること、さらにこの傾向は共感能力の高い人ほど強いことが示された。

参考URL:Mentalizing about emotion and its relationship to empathy.

コメント

もう少し詳しい話をすると

実験では例として、間違ったことを信じている人(今期は黒字であったと信じている上司)に本当のこと(実は計算間違いで赤字であった)を伝えた時に上司はどのように感じるのかを

予測している時の脳活動を測ったのですが、

感覚関連皮質や視床といった感覚系の情報処理システムがよく働いており、共感能力の高い人ほどその傾向が顕著であったことが示されています。

つまりこれは「あたかも」自分が感じているように脳が活動して、上司の気持ちをシミュレーションしてしまうということで、共感性の高い人ほどこの傾向が強かったそうです。

頭のキレる人が必ずしも相手の気持がよく分かるというわけではないのはこの辺があるのかなと思ったり

あるいは日本語的に「クレバーな人、かしこい人」というのは、このへんのバランスがいい人なのかなと思ったりしました。

 

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