
情動に関する脳内ネットワークとは?
脳というのはネットワークに例えられるようです。
例えばこの図を見てください。
これはあるネットワークの模式図なのですが
これは見様によっては人間関係のネットワークにも見えるし
あるいは国内線と国際線から構成される5大陸を結ぶ航空ネットワークのようにも見える
あるいはインターネット上の人気のあるサイトの関連図のようにも見えるのではないかと思います。
脳というのも上記の例に漏れず、ネットワーク的な構成になっているようです。
それでこのネットワークの見方なのですが、二通りの見方があるそうです。
ひとつはつながっているかつながっていないかだけでみるもの、これは解剖学的連結と言って、実際に解剖学的につながっているかを見るものだそうです。
もう一つは機能的連結と言って、どういうふうにつながって活動しているかを見るものだそうです。
たとえばさっきのネットワーク図を学校のクラスの人間関係としてみてみると
隣のクラスと抗争がある時なんかは喧嘩が好きな子を中心とするつながりががササササーッと強くなって、あたまの冷めた人たちとのつながりは薄くなるかもしれない。
あるいは何事も無く平和なときには、それなりにみんなゆるくつながり合っているかもしれない。
テスト前になればあたまの良い子を中心とするつながりがつよくなるかもしれない。
ネットワークというのはこんなふうに結構ダイナミックで、状況に応じてつながりの度合いも変わってくる、そんなもののようです。
脳でも何かを見ている時の脳のつながり方と、何かを一生懸命考えている時、何かを真似している時では、脳という同じネットワークを使っているにしてもそれぞれつながり方が違ってくるのではないかと思います。
こういった状況に応じたつながり方を機能的連結というそうです。
今日取り上げるのは情動刺激を提示した時の視覚野の働きをこの機能的連結がどうなっているのかという視点で調べたものです。
結果を述べると
①情動的な刺激を見せると視覚野内(V1,V2,V3、V4)の結合性が高まる
②また情動的な刺激を見せると視覚野と他の領域(上側頭葉、頭頂間溝、補足運動野など)の結合性は低下する
③中立的な刺激を見せると視覚野と他の領域との結合は適度な状態となる。
ということだそうです。
国内線と国際線の喩えがわかりやすいと思うのですが、視覚野内の結合性が高まるというのは国内線ネットワークが増便されるということで、視覚野外の領域との結合性が低下するというのは、国際線の欠航が増えるようなものとイメージしてもらえればと思います。
脅威刺激に適応するために、つながりの再構成が行われるのではないかということが述べられています。
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【要旨】
「課題とは直接関係のない情動的な刺激がV1からV4にどのような影響を与えるかについて調べた。恐怖表情と普通の表情が刺激と結び付けられた色との組み合わせで提示された。恐怖表情と黒色の円環がペアで出された時には微弱電流による刺激が与えられ、それ以外の時には電気刺激は与えられなかった。実験の結果、恐怖表情の提示によって視覚野の活動が高まることが示された。電気刺激と結び付けられた円環とのペアで表情が示された時には、恐怖表情と普通の表情のいずれにおいても、電気刺激と結び付けられていない円環とのペアの表情を提示した時と較べても、V1からV4の活動が高まることが示された。また恐怖表情や電気刺激と関係づけられた円環の提示によって視覚野の機能的結合性が高まることが示された。このことから情動的な学習により脳の機能的結合性に変化を与えうることが考えられた。以上のことから課題とは直接関係のない情動的な刺激は、視覚野の初期活動を高めるだけではなく、その活動パターンにも影響を与えることが考えられた。」
参考URL:Affective learning enhances activity and functional connectivity in early visual cortex.
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