感情と身体認知の関係とは?
昨日は顔情報に対して選択的に働く領域の話をしたのですが、今日取り上げるのは身体情報に対して選択的に働く領域についてのものです。
繰り返し述べているように視覚処理経路には大きく分けて2つあって、一つは空間処理に働く背側経路、もうひとつは意味処理に働く腹側経路というものがあるそうです。
図を見ていただければわかるように意味処理に関わる腹側経路というのは側頭葉の下の方に抜けていくのですが、この側頭葉の下の方に紡錘状回と呼ばれる領域があります。
この紡錘状回には、顔面に対して特異的に反応する領域だけではなく、身体情報に対して特異的に反応する領域があるそうです。
身体情報に対して特異的に働くというのは、たとえば点と棒で構成されたスティックピクチャーのような模式的なデザインに対しても、それが身体であるというふうにコードする、そんな働きなのではないかと思います。
このように身体情報、いいかえればヒトのカタチというものを特異的にコードする領域というのは紡錘状回だけでなく、高次視覚野にもあるそうです。
ちなみに紡錘状回の身体コード領域をFBA( fusiform body area),
高次視覚野の身体コード領域をEBA(extrastriate body area)と呼ぶようです。
今日取り上げる論文は、この紡錘状回の身体コード領域にしろ、高次視覚野の身体コード領域にしろ、怒っていたり、喜んでいたりという情動的な身体動作を見ることによって、より強く活動することを示したものです。
このような活動の変化は情動情報をコードする扁桃体のフィードバックを受けて強くなったり弱くなったりするのではないかということが述べられています。
【要旨】
「情動的な表情によって腹側側頭葉の顔面に選択的に反応する領域の活動が調整されることが知られている。今回、情動的な身体表象においても身体に選択的に反応する領域の活動が調整されうるか調べた。実験では情動的な身体動作と、中立的な身体動作を被験者に見せ、その時の脳活動を比較した。結果、線状体外身体領域と紡錘状回身体領域の2つの視覚領域で情動的な身体動作に対して神経活動の変化が見られた。またこれらの視覚領域の神経活動の変化には扁桃体の活動が関与していた。これらのことから情動的な身体動作に特異的に反応する視覚領域があり、これらの反応は扁桃体によって調整されることが考えられた。」
参考URL:Emotional modulation of body-selective visual areas.
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コメント
脳卒中の回復期病院から小規模な整形内科病院に転職して
脳卒中患者の解釈やリハの進め方についてあれこれディスカッションする機会というのは大分なかったのですが
しばらくぶりであれこれディスカッションする機会が持ち、なんだかすごい久しぶりだったので、ぐったりと疲れ、また面白くもあったのですが
こういうディスカッションというのは神様がいるのかいないのかを論じる神学論争とにてやっぱり疲れます。
だって見えないんだもん(´・ω・`)
それはさておき、隣国で初の女性大統領が当選したということで街頭インタビューを見ていると
彼の地の女子大生が「国の母として頑張って欲しい」というコメントをしていたのが印象的でした。
女性が権力を取ったということはフェミニストからしたら大喜びで
「家庭」とか「母」とかいう概念は、上野千鶴子みたいな感じのフェミニズムの文脈からすれば女性を社会から阻害するものとしてあんまりいい言葉として扱われないと思うのですが
女性権力者を「母」として解釈するのが、なんだか不思議な感じがしました。
別にフェミニズムがいいとか悪いとかいってるわけではなく
ただヒトがものを見る時というのは、知ってか知らずか何らかの特異的な枠組みにはめて見るのだなあと思ったのです。
目の前の現象を、構造化して取り込むことが、知覚とか認知とかそんなものかと思うのですが
ヒトがそういう生き物である以上、何かのみるときには何らかのバイアスがかかってしまう、その人、その人によって特異的な枠組みによって解釈されるわけで
ものをそのままみるというのは本当に難しいと思うのです。
同じ患者さんを見てても、いろんな物言いがあるのはそういうことなのかなと思いまいた。
ひねくれ者の大人なのですが、子供のように素直な視点をもちたいなと思います(T_T)
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