「談話に伴うアイコン的なジェスチャーと談話内容に無関係なジェスチャーの神経的統合:機能的MRIによる研究」
私達の脳というのはとんでもない数の神経細胞と、さらにまたとんでもない数の神経連絡からなっていると思うのですが、不思議なことに私達の意識は一つしかありません。
さんまが焼けていて火がボーボーいって焦げていたら、炎を認識する視覚とボーボーいっているのを認識する聴覚と、焦げた匂いを認識する嗅覚が働いていると思うのですが、これらの情報は脳の中でひとまとまりになって認識され「サンマがやばいことになっている」というふうに認識されます。
脳の中にはこんなふうにいろんな情報をひとまとまりにして意識するようなはたらきがあるそうなのですが、これはいったいどういった仕組みになっているのでしょうか。
今日取り上げる論文はジェスチャー認知に関わる脳活動について調べたものです。
私達は普段何かしらジェスチャーしながら話をしますが(「これすごい大きくて・・」の時に腕を大きく広げるとか)、こういった時には視覚情報と聴覚情報がどこかでバインドされているはずです。
この研究によると側頭葉と後頭葉の境目辺りがこの情報のバインディングに関係しているのではないかということが述べられており、「大きい」という言葉も「おおきい」というジェスチャーもここでひとつの概念として処理されるのだろうか、そんなことを考えました。
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ポイント
今回の研究では
①母国語(ドイツ語)で話しながら談話内容と関係のあるジェスチャーを行っているのを見ている時
②母国語の談話内容と関係のないジェスチャーを行っているのを見ている時
③外国語(ロシア語)で話しながら談話内容と関係のあるジェスチャーを行っているのを見ている時
④外国語の談話内容と関係のないジェスチャーを行っている時
⑤ジェスチャーなしで談話を聞いている時
の5条件で脳活動の測定を行った。
結果母国語でジェスチャー付きの談話を聞いているときにはそのジェスチャーが談話内容に関係があってもなくても両側の側頭後頭接合部に活動の増加が認められた。
またジェスチャーが談話内容と関係のあるときには左の側頭後頭接合部に活動の増加が認められ、このことからジェスチャーに関わる情報と談話内容に関わる情報は左側頭後頭部で統合されることが考えられた。
参考URL :Neural integration of iconic and unrelated coverbal gestures: a functional MRI study.