脊髄損傷では脳のネットワークはどのように変わるのか?
今日取り上げる論文は脊髄損傷患者の皮質ネットワークについて調べたものです。
実験では座って下肢を動かしている(脊髄損傷患者では実際の動きは伴わないので動かそうとしている)動作をさせているときに、脳にどのような機能的ネットワークが立ち上がっているかを健常者と比較して調べています。
結果、両群とも情報伝達の要になる部位は帯状皮質運動野となっているそうです。
この帯状皮質運動野がネットワークのハブになるという基本的な構造を残したまま、脊髄損傷患者では一次運動野の活動に替わり補足運動野から他領域への連絡が強くなっていることが示されています。
この図がとてもわかりやすいので興味のある方は是非見ていただければと思います。
とても興味深いグラフになっています。
(図中略語 SMAp:補足運動野 MIL:舌に関わる運動野 MIF:下肢に関わる運動野 BA7:ブロードマン7野(体性感覚連合野)BA6:運動前野 CMA:帯状皮質運動野 R,Lは右左)
【要旨】
「健常者と脊髄損傷患者の皮質ネットワークの相違についてグラフ理論を用いて調べた。結果両群ともに帯状皮質運動野がネットワークの重要なハブとなっていること、両群の間でネットワークの構成の違いがあることが明らかになった。また脊髄損傷患者の皮質ネットワークでは局所的な連結性が代償的に高まり、ネットワークとしてはより頑強な構造になっている傾向が見られた。」