情動的な言葉と高次視覚野の関係とは?
「残酷!」「驚異の」「鬼嫁!」「悲惨!」
などなど・・
女性週刊誌の表紙というのは、大分賑やかでセンセーショナルな言葉がてんこ盛りになっているように思われます。
こういった言葉が並んでいると、興味が無いとは分かっていてもついつい視線がそっちに向いてしまう、これはどういうわけでしょう。
今日取り上げる論文はこういった情動的な言葉を読んでいる時の脳の活動について調べたものです。
つまり言葉の持つ力がどれだけ脳に影響を与えるかを調べたものですが、この言葉の力というのは単に快―不快で二分できるものではないそうです。
どれだけインパクトが有るかないかというのでも分けることができるそうです。
つまり、不快-インパクト少ない→(悲しい) 不快-インパクト多い→(残虐!)
快-インパクト少ない→(楽しい) 快-インパクト多い→(極楽!)
のように、こんなふうにして快-不快、インパクト大-小の4つのマトリックスで言葉の力を分けて考えることができるそうです。
実験では中立的な言葉から快、不快、いろいろな言葉を読ませた時の脳活動を調べてみたのですが、やはり情動的な言葉のほうが高次視覚野の活動を高めることがわかったそうです。
週刊誌の見出しのように情動的な言葉に注意が言ってしまう(高次視覚野の活動が高まってしまう)というのはこういう背景があるかなと思いました。
活動の仕組みとしては
高次視覚野→扁桃体→高次視覚野で
扁桃体を介してフィードバックがかかる結果ではないかということが述べられています。
またこの注意のむき方(高次視覚野の活動の増強具合)に影響をあたえるのは快-不快よりもインパクトの要素が多いのではないかということも述べられています。
それゆえ「悲しい」よりも「超極楽!」のほうに目が向いてしまうのかなあと思いました。
要旨
「被験者が情動的な言葉を読んでいる時にどのような脳活動が起こっているのかを事象関連電位を使用して調べた。結果、情動的な言葉と中立的な言葉を比べると事象関連電位の初期段階で違いが見られた。具体的には刺激提示後200-300ミリ秒後の左後頭側頭領域の活動の増強が見られた。このような変化は繰り返しの刺激を与えても変化がなかった。このことから情動的な言葉は視覚情報処理の初期段階に影響を与えることが考えられた。このようなことから言葉の内容よりも覚醒に与える要素が視覚情報処理に大きな影響を与えていることが考えられた。これは扁桃体と高次視覚野の連結によるものと考えられた。」
参考URL:Buzzwords: early cortical responses to emotional words during reading.
コメント
平成生まれの人は知らない人が多いのかもしれないけれど
その昔「インパク値」を評価する番組があって、
面白いか面白く無いかではなく、インパクトがあるかないかを評価する、そんな何組があったけれども、
おそらく扁桃体を中心とした認知モジュールは情報の内容よりもインパクトの多寡で情報を処理しているような気がして
評価方法としては神経生理学的に考えて妥当だったのかなと思いました。
優れた芸術というのは、人の心をどれだけ動かすかであって必ずしも美しくある必要はないわけで
良いー悪い、美しい-汚いは後付で、まず大事なのはインパクトなのかなあなどと考えました。
美しくなくても、良くなくてもいいのでインパクトの有る人生を送りたいなあと思います。
美しくて、良いに越したことはないのですが・・・(-_-;)
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