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脳の中の注意の切り替えメカニズムとは?

今日取り上げる論文は注意の切り替えについて調べたものです。

注意には自分から何かを探しに行くようなトップダウン的注意と黙っていても目に飛び込んでくるようなボトムアップ型の注意があるそうです。

普段生活している文にはどちらがどっちというわけではなく、ボトムアップとトップダウンが協調して働いているようです。

ボトムアップの注意システムはボトムアップで脳の中をグルグル周り、トップダウンの注意システムはトップダウンでグルグル周り、その2つをつなぐ場所として頭頂間溝があるようです。下記の図を見ると、この頭頂間溝がボトムアップ型注意を抑制したり、抑制を解除したりして両者のバランスをとっているようです。

トップダウン注意システムとボトムアップ注意システムについてはこの画像が参考になると思います。IPS:頭頂間溝 FEF:前頭眼野 MFG:中前頭回 VFC:腹側前頭前野 TPJ:頭頂側頭接合部

 

このトップダウン的注意とボトムアップ注意とは異なる第三の注意として、おそろしいものに注意が反射的に向いてしまうという脅威検出型注意があるのではないかと言われているのですが、今日の論文はこの脅威検出型注意について調べたものです。

こわいものを見ると目が釘付けになるといいますが、そこであえて目をそらすためには何らかの意思、言い換えればトップダウン的な注意が必要になると思います。

脅威刺激から目をそらして、別の方向に注意を切り替える実験を行い、その時の脳活動を調べたところ、頭頂間溝の活動の低下が見られたそうです。

しかし細かいところを色々見ると、ただのトップダウン処理やボトムアップ処理と異なる点もあり、この脅威検出型注意システムは上記の図に示したようなトップダウン-ボトムアップ注意システムと一部重複するようなシステムで動いているのではないかということが述べられています。

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【要旨】

「脅威刺激が視界に現れると、反射的に注意が脅威刺激に対して向けられるのではないかということが言われている。しかしながら前頭-頭頂ネットワークのどの部位がこの選択的な注意に関わるかについては明らかにされていない。本研究では脅威刺激が注意の方向付けに与える影響ついて機能的MRIを使用して調べた。結果、脅威刺激の影響を無視して注意の方向を切り替えるときには頭頂間溝の活動が低下することが認められた。結果として、脅威刺激は通常の外在刺激同様の反応を引き起こすが、その反応の仕方が一部異なることから、脅威刺激による注意の方向付けシステムは通常の外在刺激によるシステムと一部重複していることが考えられた。」

参考URL:Neural systems for orienting attention to the location of threat signals: an event-related fMRI study.

コメント

その昔、居酒屋さんで働いていた頃

四六時中てんぱってはミスをして、始終レジ裏に店長に呼び出されて「お前何やってんだよ」と怒られていたのですが

店の入口からお客さんが入ってくるのが視界に入ると反射的に視線がそちらに切り替わり

「おい、お前どこ見てんだよ、人の話を聞くつもりあるのか」とまだどつかれたりしたのですが

この辺の仕組みが視覚的注意の勉強をしていて何となく腑に落ちました。

傍から見れば不自然な行為や現象も、本人からしてみればそうせざるを得ない必然性があって、そうなっているのかなと思います。

それは患者さんの代償歩行だったり、ちょっとやめてよと言いたくなるような他人の言動だったり、いろいろですが

情動に流されず、なんでだろうと考える努力はしたいと思います。

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