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「模倣、共感、ミラーニューロン」

ヒトは特殊な動物です。

どの辺が特殊かというとコトバが使えて、モノマネが上手で、なおかつ人の心を読み取れるという点において、ヒトは他の動物と隔絶していると思うのですが、この特殊性を支える脳機能というのはあるのでしょうか。

今日取り上げる論文はミラーニューロンシステムと模倣能力、共感能力の関係について述べたものです。

ミラーニューロンシステムとはその名の通り他人の動作を鏡写しのように自分の動きにかえてしまうようなシステムです。

ごくごく大雑把に説明すると、これは脳の中の視覚システムと運動システムをつないでいるようなシステムで、つまりは見ることを動くことに変換するようなものです。

このシステムはいろいろな動物にあるそうですが、ヒトではとりわけ発達していて、それゆえヒトは模倣、モノマネが極めて上手ということがあるそうです。

この論文によるとヒトの共感機能というのはこのミラーニューロンシステムがベースになっているのではないかということです。

つまり泣いている人や肩を落としている人が目の前にいると、脳が勝手にその動きを模倣しようとし、それによって同じような感情が引き起こされ、その人の気持がわかるということになるのではないかということが述べられています。

【要旨】
モノマネや共感については社会心理学分野において長らく議論されてきたが、近年の神経科学的研究により模倣の認知モデルについては意見の収束を見ようとしている。ヒトの動作を説明するものとして、観念運動という枠組みがある。この考え方は動作におおける感覚と運動には共通する神経基盤があり、これがヒトの模倣能力の下支えになっているというものである。さらにもう一つの説明は経験依存性のヘブ則に基づく連合的順序学習によって他者の運動の意図を学習するというものである。社会心理学による研究により、模倣やモノマネは普遍的で自動的に生起するものであることが報告されており、これが共感を促していると考えられる。神経科学により細胞レベルと神経システムレベルでこの認知心理学や社会心理学の知見を裏付ける事実が報告されている。なぜこのような神経メカニズムが選択されたのか、またその利得とはいかなるものなのか?この神経的な鏡写しの方法は“他者の心の問題(どのようにして他者の心を知りうるのかという問題)”を解決し、間主観性を可能にし、社会的な行動を促すものであると考える。

参考URL:Imitation, empathy, and mirror neurons.

コメント

「人の心が分かる」というよりは「人の心がわかったような気分になる」というところが正しいのかなと思います。

もう少し詳しい話をすると

ミラーニューロンシステムというのは側頭葉、頭頂葉、前頭葉のいろんな領域から構成されているシステムなのですが

模倣の時はこのシステムがワーキングメモリ(背外側前頭前野)との結びつきが強くなり

共感の時はこのシステムが情動システム(辺縁系)と結びつきが強くなるそうです。

ミラーニューロンシステムと共感、心の理解というものを考えると

社会というのはいろんな人がいて、皆が協力しているようだけど

結局は登場人物皆が皆、一人芝居をしているだけなのかなと思うことがあります。

他人の心というのは結局は自分の心の中にしかなく、

そう考えると少し寂しいなと思ったりします。

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