
「触覚的な気付き:触覚観察と触覚経験における二次体性感覚野と視床枕の活動」
ヒトは感情移入する生き物です。
この感情移入があるからドラマを見ていても、あたかも自分が主人公のようにドキドキしたりヒヤヒヤしたりするのですが、こういった時には脳はどんなふうに活動しているのでしょうか。
今日取り上げる論文は他者の触覚をイメージしている時の脳活動について調べたものです。
実験では実際に自分の足を触られた時と他人が足を触られている様子を見た時、さらには二本並んだ棒っ切れが触られている(?)様子を見せ、その時の脳活動を測定したのですが、驚いたことにいずれの条件も同じような脳活動パターンが見られたそうです。
つまり自分が触らていても他人が触られていても、足っぽい何かが触られていても同じような部分が活動するということで、こういった仕組みがあるゆえヒトは他人の感覚を自分の感覚のように感じられるのではないかということが述べられています。
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【要旨】
タランチュラがジェームス・ボンドの胸の上を這っている場面を見た時にはあたかも自分の胸に蜘蛛がいるかのような感じがして身震いすることがある。しかしながらこういった“触覚的な共感”にはどのような神経機構が関わっているのだろうか。他人の動作を見るとそれと同じ動作に関わる運動前野領域が活動することが知られているが、それと同じようなシステムが触覚に関しても存在しているのだろうか。今回の研究では被験者に実際に足を触られている時と、他人が足を触られている時の動画を見せた時の脳活動を機能的MRIを使用して測定を行った。結果いずれの条件でも二次体性感覚野/視床枕に同様の活動の増加が見られたが、一次体性感覚野にはそのような活動は認められなかった。こういったシステムが他者の触覚感覚を自分のものとして感じられるための窓口になっていることが考えられた。
参考URL:A touching sight: SII/PV activation during the observation and experience of touch.
コメント
もう少し詳しい話をすると
どんな条件でも高次の感覚領域である二次体性感覚野および視床枕のあたりに共通した活動の増加が見られたそうです。
脳に入った感覚情報は奥に流れていけば行くほど抽象的な情報になっていくのですが
この二次体性感覚野というのは場所で言えば一次体性感覚野ー二次体性感覚野ー島皮質の流れの真ん中ということで
つまりは具体と抽象の真ん中くらいの感覚と関係があるのかなと思いました。
視床枕(pulvinar)に関しては興味のある方はこの図を見てもらえれば分かりやすいかと思います。いろんな情報がまとまって入ってくるような情報のハブになっているようなところのようです。
訴求性のある画像や動画というのは、この辺の感覚共感システムに働きかけるようなものなのかなと思いました。