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共感能力に臨界期はあるのか?扁桃体との関連

「アヴェロンの野生児」の話は人間発達の話と絡めてよく出てくるのではないかと思います。

「アヴェロンの野生児」は18世紀のフランスで捕獲された野生少年です。

捕獲されたときは狼のように走り回り、言葉を介さず、情緒を解せず、なんとか人らしく育てようとしたけれども、結局大きな変化を見せないまま、40歳でこっそりと死んでいったそんな人物です。

言葉を話し、人の意を汲み取りというのはあたかも先天的な能力のように捉えられるのですが、アヴェロンの野生児の話のように、大分後天的な要素によるものも大きいようです。

言葉でいけば、3歳から5歳くらいまでの間に言語情報に接しなければ、言葉を一生獲得できない。

本気でピアノをさせたかったら3歳から始めなさいという話もありますが、絶対音感の獲得も6歳が限度とも言われています。

小さい内に獲得しなければその後身に付けるのにとても時間がかかったり、あるいは一生身につけられないようなものがあって、こういうのは学習の臨界期ともいわれているようです。

今日取り上げる論文は、人の表情の読み取りにも臨界期があるのではないかということを扁桃体の働きと絡めて考察したものです。

実験ではてんかん発作によって扁桃体の損傷をきたした人を対象に恐怖表情の認知テストを行わせ、その時の脳活動を調べています。

結果、右の扁桃体損傷と左の扁桃体損傷を比べると右の扁桃体損傷のほうが表情認知の障害が重いこと、

また5歳未満で扁桃体損傷をきたした例とそれ以降に損傷をきたした例を比べると、5歳未満のほうが表情認知の障害が重いことが示されています。

脳の活動を見ると、恐怖表情の認識には扁桃体だけではなく、その他の脳の広範な領域が働くのですが、認識できない群ではこれらの関連領域の活動が少ないことが示されています。

こういったことから、表情認知障害というのはネットワーク障害で、右扁桃体損傷のほうが脳の構造上、ネットワークに障害が出やすいからではないか、

また5歳未満では臨界期以前の損傷で障害が重いのは、表情認知処理ネットワークが構築できなかったためではないかということが述べられています。

【要旨】

「様々な研究によって内側側頭葉が表情認知に重要であることが示されている。ヒトでは両側の扁桃体の障害で恐怖表情の判別が障害されることが知られている。片側の内側側頭葉の障害が表情認知に与える影響を調べるために、内側側頭葉型てんかん患者を対象に実験を行った。結果、右内側側頭葉型てんかんでは恐怖表情の認知に障害があり、発症が5歳未満である場合それが顕著であることが認められた。また重度障害例では恐怖表情の情報処理に関わる神経ネットワークの機能不全が認められた。これとは対照的に左内側側頭型てんかん患者や健常者は左下前頭前野や両側の眼窩-側頭皮質の広範な活動が認められた。」

参考URL:Impaired fear processing in right mesial temporal sclerosis: a fMRI study.


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コメント

昨日のトロッコ問題の話ですが


5人を助けるために関係のない1人を殺すのが正しいのか、あるいは関係のない1人を助けるために既定の5人を見殺しにするのがいいのか、そんな課題だと思うのですが

これでいけば第三の回答として自分がトロッコに突っ込んでトロッコを止めるという選択肢がもっとも倫理的だと思うのですが、

ただ第四、第五の解答例として光速で5人のもとに言って死ぬ必然性、神の存在を信じさせ、そのまま死んでもらう、

あるいは一人を殺して、あいつは人間じゃなかったと言いはる、

目をつぶって見なかったことにする

みんなもやってるからといって、どちらかを殺す、

一人を殺して、偉大な勇者だと褒め称えておく

光速で契約して、多額の生命保険をかけさせ、残った家族を安心させる

トロッコを神の使いということにして、殺害を正当化する

下手に共感能力を持ったがゆえに、他人が痛くても痛いし、自分が飛び込めばなおのこと痛い(というか死んでしまうし)

共感能力があるゆえに、何をしても、どこを向いても「痛い」

ゆえに共感能力を持った人というのは恒常的な「痛み」を宿命的に義務付けられており

このジレンマをどうにか解決する形で宗教、政治、経済、家族システムなどいろんな人らしいシステムを作ってきたのかと思いました。

トロッコじゃなくても、上記のいろんな方策は国でも職場でも家族内でもきっとあって、

トロッコに飛び込めず、さりとて人を殺せずという人の同仕様も無さが、この素晴らしい文明社会を作ったのかなと思うのです。

なにかのCMでもないのですが、このろくでもない、素晴らしい世界なのかなと。

今日も一日仕事を頑張りたいと思います(T_T)

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