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前頭頭頂ネットワークと注意力

「目端が利く」という言葉があります。

目の端が利く、転じて、抜け目がない、眼力があるというような意味のようです。

リハビリの仕事をしていて、板前さんやコックさんをしていた人を観ることがあるのですが、こういった人たちは目端が効いているなあと思うことがあります。

こういった人たちは、視界の周囲、普通なら気が付かないような眼の端っこに起こった変化を捉える力が強い。

聞いてみると、修行時代、厨房でぼやっとしていると、親方に蹴飛ばされるので、常に周囲に目を配るのが習い性になったというような話を聞くことがあります。

それにしても「目の端を利かせる力」というのはどういう力なのでしょう。

「注意力」とも似ていますが、ちょっと違う。

変化した対象を見つける力というよりは、変化そのものを捉える力なのかなというような気がします。

サッカーであれば、フィールドのあのへんで“変化”が起こった、ということを捉える力、

戦闘機乗りであれば、空中の何処かに起こった“変化”を察知する力、

プロデューサーであれば、時代の“変化”を捉える力、

眼の前に広がる景色の何かが変わっているということを鋭敏に捉える力、

「何」を理解することではなく、まず第一義的に「変化」そのものを鋭敏に捉える力、こういったことが「目端が利く」ということなのかなと思います。

前置きがずいぶん長くなりましたが、今日取り上げる論文は目端が利かせるのは脳のどのへんかを調べたものです。

モグラたたきを例に考えてみましょう。

モグラたたきでモグラを見つけるということは

①視界のあの辺で変化が起こった。
②ニョキッと顔を出しだのは「モグラ」だ。

という2つの情報処理で感がられるのではないかと思います。

これがどういうことかと考えていると前者は空間処理、後者は意味処理、その2つで「あそこにモグラが顔を出した」という認知処理が可能になる。

こういったモグラたたきでは注意力が必要とされて、この注意力というのは前頭葉と頭頂葉を結ぶネットワークでなされるということが知られています。

今日の論文では、そこをもう一つ掘り下げて、注意の中でも空間処理に働くのはこのネットワークのどのへんか、また意味処理に働くのはこのネットワークのどのへんかについて調べたものです。

実験の結果によると、前頭-頭頂ネットワークの中でも空間処理に働くのはより内側のネットワーク、意味処理に働くのはより外側のネットワークであることが示されています。

【要旨】

「近年、視覚的注意の神経学的基盤についての研究が数多くなされている。こういった研究では、手がかり刺激と注意の関係を事象関連機能的MRIを使用して調べている。こういった研究の結果から、前頭葉と頭頂葉からななるネットワークが注意に対して重要な役割を果たしてることが明らかにされている。本研究ではこの注意反応における対象の意味認知と空間認知を切り離して考え、それぞれに対応する脳活動について調べた。結果、前頭-頭頂ネットワークの内、内側領域が空間認知に対応し、外側領域が意味認知に対応していることが考えられた。」

参考URL:Functional parcellation of attentional control regions of the brain.

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コメント

体育会系出身の人はなんだか気が利く人が多いような気がして

これは多分に縦社会で揉まれてきたこともあるとは思うのだけれども

こういった人たちは、時に空間的な視覚処理能力が高いなと思うことがある。視界の外に起こったことでもサッと反応できる力というか、そんな鋭敏さがあるような気がして

上司の機嫌しても、フィールドの変化にしても、変化を捉える力というのは、もっとメタレベルで調整される何かかなあと思いました。

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