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脳はどのようにして自己評価しているのか?

ヒトは生身の生き物です。

それゆえいつも元気いっぱい定常運転というわけにはいかない。

元気があるときもあれば元気のない時もあり

元気がないのも極まれば、自分のすべてがダメ人間と思えてしまうこともある。

昨日まで自分の長所が今日は短所にしか見えないことがある。

昨日は自分は優しく、行動力があって、頑張りやだと思っていても

今日の自分は優柔不断で、後先考えず行動し、要領が悪いというふうに感じてしまうかもしれない。

「優しい」も「優柔不断」も同じ性質のオモテウラだと思うのですが、元気のあるなしで評価がずいぶん異なってしまう。これは神経科学的に考えるとどういうことなのでしょうか。

今日取り上げる論文は自己評価に関わる脳活動について調べたものです。

結果を述べると自己評価というのは脳の中で二段階でなされるそうです。

まず第一段階ではその言葉が自分の性質とあっているかどうかを判断するらしいです。

実験では被験者に「やさしい」という感じのいい言葉だとが、「けちだ」という感じの悪い言葉だとかいろいろ言葉を提示するのですが、第一段階ではとりあえずそれが自分のことにあっているかどうかだけを判断する。

そしてそれがもしあっているようだったら、その情報は二段階目に送られ、そこでその言葉がポジティブかネガティかを判断する、そういった仕組みがあるそうです。

つまり自己評価というのは脳の中で二段階で行われ、

あっているかあっていないかの判断がなされた後に、その後ポジティブがネガティブかの判断が行われるとうい二段階構造になっているようです。

うつ病になるとこの二段階目の処理をする部分がうまく働かなくなり、結果全ての性質をネガティブに捉え、結果自己評価が低くなるのではないかということが述べられています。

 

【要約】
自己評価は認知的要素と情動的要素からなるが、この二つの要素に関わる神経基板が異なるものかどうかについて機能的MRIを用いて検証を行った。実験では提示される言葉が被験者にとって好ましいものであるか(例;親切だ)、あるいは心よくないものであるか(例;なまけものだ)について判断してもらう時の脳活動について調べた。結果前頭前野の隣接した部分が認知的要素と情動的要素の二つの要素で異なる活動をすることが示された。内側前頭前野はその言葉が正しいか、正しくないか、つまり自分について当たっているか当たっていないかにだけ反応しており、それはその言葉が好ましいものか好ましくないものかについては関係しなかった。そしてその言葉が正しいと判断された時にはここに隣接する腹側前帯状皮質の活動が変化し、好ましいか好ましくないかで活動が異なっていた。ヒトの本性がどういったものであるかについては科学的にも長い議論がなされているが、本研究は自己の単一性が神経学的にどのようなのものであるかについての議論の端緒になりうるものになったと考える。

参考URL:Neuroanatomical evidence for distinct cognitive and affective components of self.

コメント

少し詳しい話をすると

脳の中には「わたしはわたし」という自己感覚の中枢のようなシステムがあり、

これは右脳と左脳がくっついている、表面からは見えない脳の内側のあたりにあります。

何もしていない時に強く活動しいるので”デフォルトモード”ネットワークと言われているのですが

このネットワークの中心になるのが後帯状皮質と内側前頭前野といわれる領域で、自己評価の第一段階目ではこの領域が「あっている/あっていない」を判断するようです。

第二段階目の「好ましい/好ましくない」という判断は、この論文によると同じくデフォルトモードネットワークに含まれる前帯状皮質腹側領域が関わるようです。

上司と部下の面談というのはカウンセリングでもないのですが場所の設定、状況の設定が大事という話も聞き

これは不安感が強くなるような状況では第二段階目の前帯状皮質腹側領域の活動が低下し、結果放り出されるいろんなワードがネガティブに捉えられやすくなり、

それゆえ面談においては場所の設定が大事なのかなと思いました。

あらためてコミュニケーションは言葉だけではないのだなと思いました。

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