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自己は脳の中のどこにあるのか?

画家は時に自画像を描いて自分のことを見つめますが、自分自身に関する情報というのは果たして脳の中でもスペシャルなんでしょうか。

世の中にはいろんな情報が溢れていて、生まれてこのかたいろんな情報を蓄え続けます。

しかし自分の顔だったり、自分の性格だったり、自分の生きざまだったり、そういった自分自身に関する情報というのは脳の中で特別に処理されているのでしょうか。

それともリンゴやコタツといった他の一般情報と同じように、脳の中で淡々と同じ仕組で処理されているのでしょうか。

今日取り上げる論文は自分自身の情報を処理している時の脳活動について調べたものです。

脳というのは様々なシステムが組み合わさって出来ているのですが、その中でも「わたしはわたし」という感覚に関わるシステムがあることが知られています。

オモテから見えない脳の中心部にあってデフォルトモードネットワークと呼ばれているのですが、これは何もしていない時、つまりボーッとしている時ににグツグツ活動して、何か仕事をしている時には活動が低下するという特徴を持っています。

仕事に夢中になると我を忘れるということがありますが、この現象が示す通り「わたし」システムと「仕事」システムはシーソーゲームになっていてどちらかが上がればどちらかが下がるという仕組みになっているようです。

実験では自分自身に関わる言葉を判別させる仕事をさせた時の脳活動を調べたのですが、やはりこのデフォルトモードネットワークが自分の情報の処理に特別に関係しているのではないかということが述べられています。

【要約】
自分自身に関する知識というのは脳の中で特別に表象されているかについては研究者の間でも長い議論がなされてきた。記憶機能での検証実験では、自分自身の性質に関する知識というのは、他の知識と比べて思い出されやすいことが示されている。今回事象関連機能的MRIを使用して自分のことに関する処理が脳の中でどのようになされているかについて研究を行った。実験では被験者は提示される言葉に対して、それが自己に関連した言葉か、他者に関連した言葉か、それとも他の物品に関連した言葉かを判断する課題を行い、その時の脳活動を測定した。結果、自己や他者に関連した言葉を判断している時は物品判断の時と比べて左下前頭葉と前帯状皮質の活動が増加していた。また内側前頭前野は自己に関連する言葉を聞いている時により活動している傾向があった。以上のことから自己に関連する情報は脳の中で特別に処理されていることが考えられた。

参考URL:Finding the self? An event-related fMRI study.

コメント

少し詳しいことを書くと

デフォルトモードネットワークというのは脳の中の様々な領域で構成されているのですが、その中でも内側前頭前野と言われる領域がとりわけ自分情報の処理で大事なのではないかということだそうです。

実験では自分情報と他人情報、モノ情報を判断する課題を行ったのですが、

デフォルトモードネットワークの特徴として何か課題を行っている時にはそれが何の課題であれ活動が低下するというものがあり

そういう特徴があるにも関わらず、自分情報を処理している時には内側前頭前野の活動の下げ幅が少なく、それゆえここが自分情報の処理で特別に大事なんじゃないか、そういう話なんだと思います。

物事を見るにあたって増えたところを見るだけでなく、減ったところから考えるというのも大事なんだろうなと思いました。

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