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「下前頭回弁蓋部における機能的分離:模倣と動作の観察における機能的MRI研究からのエビデンス」

ヒトは模倣の達人です。

ヒトのこの模倣能力は他の追随を許さないレベルにあるのですが、こういった機能の背景には脳の中のミラーニューロンシステムが関わっていると言われています。

このミラーニューロンシステムというのは大雑把に言うと目に見えた動きを自分の動きに変換するようなシステムなのですが、これはいったいどういう仕組みになっているのでしょうか。

もし他人の動きが全て自分の動作に変換されるならあしたのジョーでもないのですが、出会うすべての人がクロスカウンターパンチ状態になるはずです。

脳はどうやってこのミラーニューロンシステムの暴走を止めているのでしょうか。

今日取り上げる論文はこのミラーニューロンシステムについて詳しく調べたものです。

ミラーニューロンシステムの中でもとりわけ大事な前頭葉のある部位があるのですが、ここを細かく見てみると

①それが何の動きかを理解する部分

②その動きを実際の動きに変換する部分

③その動きが実際の動きにならないようにストップをかける部分

の3つに分けられ、こういった役割分担があるから見える動作が全て模倣されるということがないことが説明されています。

【要約】
近年の神経画像研究によって下前頭回が動作の観察とも方に重要な役割を果たしていることが報告されている。この下前頭回の役割を明らかにするために、過去に行われた模倣と観察に関する7つの研究のデータの解析を行った。結果、模倣に関しては下前頭回弁蓋部には二つのピークが見られ、それぞれ弁蓋部背側領域と腹側領域の活動を反映していた。弁蓋部背側領域は動作の観察においても活動していたが腹側領域にはそのような活動は見られなかった。さらに下前頭回三角部は動作の観察では活動するが模倣においては活動が見られなかった。これらの結果を元にヒトのミラー領域が機能的に分化されていること、さらに運動における内部モデルの計算論的枠組みについて論じる。

参考URL:Functional segregation within pars opercularis of the inferior frontal gyrus: evidence from fMRI studies of imitation and action observation.

コメント

詳しい話を書くと

ミラーニューロンシステムの中でも重要なブローカ野を細かく見ると弁蓋部背側領域、弁蓋部腹側領域、三角部に分けられ

弁蓋部背側領域は他人の動作を自分の動作のレパートリーと照らしあわせ、それがどの動作かを認識し

弁蓋部腹側領域はその情報を運動前野にそれを伝えて実際の動きに持って行き

三角部はそれを抑制するような働きになっているそうです。

こういったミラーニューロンシステムは動作の模倣だけではなく、相手の心の読み取りにも関わっているそうですが

心を読み取りすぎても疲弊してしまい、昔何かの動画で相手の表情のものまねを止めることができなくなった患者の苦悩を描いたものが見たことあるのですが、

時には情報を無視する能力も大事になるんだろうなと思いました。

 

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