
脳科学的には考え方と振る舞いのどちらを変えたほうが良いのか?
人間関係でもなんでも大変なことがあって相談すると返ってくる答えは
「まあ、気の持ちようだから」
とか
「まあ、相手に合わせておけばいいじゃん」
といったものが多いのではないかと思います。
いろんな人が、いろんな欲を持って、ひとところで暮らす以上、どっかでうまく折り合いをつけないとうまく回らない。
そんなこともあって社会に生きるニンゲンは自分を周りにどうにか合わせるのですが
その方法としては上記に上げたように
「考え方を変える」
あるいは
「振る舞い方を変える」
この2つになるのではないかと思います。
いずれにしても情動の制御という行為でくくられるこの2つの方法なのですが、
この2つを行っている時に、脳の活動がそれぞれどう違うかを調べたのが今日取り上げる論文です。
結論から言うと、
1)いずれの方略をとるにしても右の前頭前野の活動が肝になっていて
2)考え方を変える場合には右前頭前野背内側部、方法を変えるときには右上前頭回と補足運動野が活動し
3)いずれの場合にしても島皮質の活動が同様に変わる
4)さらに扁桃体に左右差が在り、考え方を変える場合には左扁桃体、対応の仕方を変える場合には右扁桃体の活動が変わるということが述べられています。
【要旨】
「感情の制御には複数の方略がある。一つは考え方を変える方法で、もうひとつは情動表現や行動を抑制する方法である。しかしこの2つの方略について機能的MRIを使用した研究は少なく、そのシステムについては明らかにされていない。さらに感情の制御対象となる刺激が、社会的/非社会的なものか、あるいは肯定的/否定的なものかといった文脈の違いによる脳活動の相違については殆ど知られていない。今回、様々な条件で感情の制御方略を行っている時の脳活動の変化を測定したところ以下の結論を得た。一つは考え方を変える方略と対応の仕方を変える方略では、いずれの条件でも前頭前野の異なる領域が活動していることが示された。また否定的な刺激を提示された時には、いずれの方略にしても紡錘状回内側部、前部島皮質、背内側前頭前野の活動が変化し、非社会的な文脈では中部島皮質、そして社会的な文脈では両側の扁桃体、内側前頭前野、後部帯状皮質の活動に変化が見られた。さらに返答他の活動には左右差が認められ、考え方を変える方略では左の扁桃体が、対応方法を変える方略では右の扁桃体の活動に変化が見られた。これらのことから感情の制御は脳の広範な領域によってなされること、またその活動の仕方は制御対象となる刺激が肯定的か否定的か、あるいは社会的か非社会的かといった点で異なることが示された。」
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コメント
面白かったのはどちらのやり方をするにしても不快情動に関わる島皮質の活動が変わる所で
謝る気がなくてもとりあえず謝ったり、面白くなくてもきらいじゃないふりをすれば
つまり形から入ることでも気持ちといういうのは変わるのかなと思いました。
気持ちがいっぱいいっぱいだと形から入る余裕もないと思うので、どんな時も前頭前野を回せるくらいの余裕は持ちたいものです。
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