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ボンヤリ情報と扁桃体の関係とは?

勘が鋭い人というのがいます。

あの人とあの人が付き合っているんじゃないかとか、

こいつなんか肚に持っているな、油断できない、

とか、たちどころに分かってしまう、そんな人がいるのではないかと思います。

学問の世界でもやはり勘が鋭い人がいるのではないかと思います。

全部を網羅しなくても、うっすらとした中から勘所を掴んで、グッと入っていく能力。

二重螺旋構造を発見したクリックとワトソン、

あるいは万有引力のニュートン、ミラーニューロンのリゾラッティ、

そんな人達が勘が鋭い人たちだったかということは分かりませんが、パラダイムを変えうるような仕事をする学者というのは、勘の鋭さというのも必要なんじゃないかなと思うことがあります。

人間関係あるいは学問、いずれにしても、一見、曖昧で整合性のない情報の中から核心を掴む能力、これが勘の鋭さといわれるものなのかなと思います。

しかし、この勘の鋭さというのはどういう仕組みで動いているのでしょうか。

今日取り上げる論文は、扁桃体の役割についての総説です。

もともとラットを使ったような動物研究から始まったこともあって、扁桃体というのは恐怖と関連付けて考えられることが多かったようです。

しかし扁桃体というのはラットとヒトでは大分様子も違うようです。

ヒトで見れば、たしかに恐怖刺激で反応するけど、ハッピースマイルを見せてもそれなりに反応する、怒り表情はそれほど反応しない。これはどういうわけでしょう。

扁桃体というのは進化とともに変化してきたこともあって、一概にラットと比べることはできないそうです。

大きさも違えば扁桃体を構成する神経核の種類も数も違う。

ヒトの扁桃体というのは、恐怖だけではなく、より広い文脈に沿って活動する。

では、どういった文脈で活動するのでしょうか。

この論文によると「曖昧さ」に対して反応するのではないかということが述べられています。

曖昧な情報、整合性のない情報、矛盾した情報、そういった情報に対して扁桃体は強く反応する。

曖昧な情報、不明瞭な情報というのは、ある意味非常に危険な情報になりうることもある。

なぜなら、それをしっかり解釈できなければ、個体がうまく適応できずに食べられたり、やっつけられたり、痛い目にあうことがある。

なので、不明瞭な情報が入ってくると、いち早く扁桃体が反応する。

そして脳の視覚野、聴覚野なんかに、そのはっきりしない情報をもっとしっかり見て、聞いてというふうにフィードバックをする、そんな仕組みになっているのではないかということが述べられています。

危険を回避するために、生き延びるために、曖昧かつ矛盾した情報を解釈する、整合付ける、関連付ける

扁桃体はそんな活動に関わっているのではないかということが述べられています。

【要旨】

「先駆的な研究から扁桃体というのは侵害的な刺激と関係して活動するのではないかということが考えられてきた。その代表的なものとして恐怖と関係した扁桃体の活動がよく取り上げられる。たしかに恐怖と関連した活動は哺乳類で大きく発達している。そしてこの恐怖反応は個体を潜在的な危険から回避させられるように働いている。そして扁桃体のその活動特性から扁桃体は“恐怖関連モジュール”として働いているのではないかということが考えられている。本稿ではこの扁桃体の役割を再考し、より幅広い役割があるものとして考える。これは扁桃体というのは進化の過程の中で変化を遂げ、社会性を含めたより広い環境の中で“関連性検出器”として働いているのではないかというものである。特に霊長類では扁桃体は社会の中での差異、関連性に対して強く働くようになったのではないかと考える。」

参考URL:The human amygdala: an evolved system for relevance detection.




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コメント

笑いやユーモア、ウィット、そんなものも扁桃体の文脈で取れないだろうか

いわゆる笑いというのは、よく言われるように視点をずらすことから出てくるものだと思うのだけれども

視点のズレを作り出すには、もう一つ上の所でメタ的に物事を見る必要があって

そのメタ的な視点から見た時の情報のズレ、差異、矛盾を検出してひょいと差し出す、それが笑いにつながると思うのだけれども

ここに扁桃体が絡んでないかと思ったりしました。

扁桃体というのは脳の中のツッコミ役みたいなものなんだろうか。

 

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