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前帯状皮質、後帯状皮質、海馬傍回は認知機能とどのように関わっているのか?

テレビのクイズ番組なんかを見ていると、何かはっきりしない画像が出されて、だんだん明瞭になってきて、わかった段階でピンポンと押すようなものがあったと思います。

この「分かった!」が突然くるかというと必ずしもそうではなく、その少し前に心のざわつきがあるような気がします。

「ひょっとしたら・・」とか「ああ、なんか・・」というような言葉にならないようなざわつきの後に「分かった!」が来る。

テレビの画像当てクイズでなくても、遠くから誰かがやってくると「あれ、なんか知ってる人かな?」と気が向いて、だんだん近づいてくると「ひょっとして・・」となって、しっかり分かる段階になると「ああ、あの人」となる。

こういうことを考えると何かを認識するのはいきなりどんと来るんではなくて、何かしらの前段階を踏んできていそうな気がします。

今日取り上げる論文はこの前段階の「ざわざわ・・」と「分かった!」の脳活動の違いについて調べたものです。

クイズ番組の画像あてテストのような課題を行わせたところ、「ざわざわ・・」の段階では後帯状皮質と海馬傍皮質、「分かった!」の段階では前帯状皮質背側部の活動が高まっており、「ざわざわ・・」と「分かった!」でが異なる神経活動で処理されているのではないかということが述べられています。

 


【要旨】

「近年の研究により、何かの対象を認知するときには、その対象が何であるかについて確定する前に知覚的な累積が先行してなされることが知られている。しかしながらその経過については電気生理学的に明らかにされておらず、また情動的要因がいかに関与するかについても明らかになっていない。今回健常者を対象に対象認知課題を行い、その時の脳活動について高密度脳波計を用いて測定した。実験ではまず最初に不明瞭な画像を見せ、その後順次明瞭度を挙げた画像を提示して、その画像が生物であるか非生物であるかがわかった段階でボタンを押すように指示した。高密度脳波計からの測定で以下のことが示された。1) 認知対象の情報が累積されている段階では後帯状皮質および海馬傍皮質に活動が見られる2)認知対象を明確に認識する段階では前頭前野内側面にある前帯状皮質背側部の活動が見られる。これらのことから視覚認識に先行した活動においては異なるネットワークが関与していることが考えられた。」

参考URL:Brain dynamics of upstream perceptual processes leading to visual object recognition: a high density ERP topographic mapping study.

ものを認識する前に記憶に関係する海馬傍回の活動が高まるということは

何かを見る、分かるというのは、実は脳の中で思い出しているだけなのかなと思ったり

じゃあ、今まで見たことのない新しいものを見ている時も脳は何かを思い出しているの?という突っ込みもありそうだけど

新しいものを認識する場合は、手持ちの記憶をうまい具合にコラージュして作り上げているのかなと思ったり

情報aと情報bがコラージュされて情報cができ、それがまた情報aと情報cとのコラージュで情報dが出来・・・と考えていくと最初わずかな個数で始まった情報は理論上無限の組みわせを構築することができるはずで

それはひらがな50個で世界や宇宙のすべてを表現できる言葉のシステムともにているのだけれども

私の認識している世界って、本当はただの記憶の堆積なのかなと思うこともあります。

 

 

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