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盲視と皮質下経路の関係とは?

先日盲視という現象を取り上げましたが、これは見えていないのに見えているというそんな現象のようです。

どういうことかというと人の後頭部には視覚認識の入り口に当たる一次視覚野があるのですが、ここが交通事故や柔道なんかで打ち所が悪いと,目は傷ついていないのにものが見えなくなってしまうそんなことがあります。これを皮質盲といいます。

この皮質盲の患者さんが何も見えていないかというとそんなこともなくて、見えないはずの視界に提示されたものが嫌悪を催すものだったら「なんか分かんないけど、なんか嫌な気がする」というような反応が得られるそうです。

なんで視覚認識の入り口が働いていないのにそんな認識が可能かというと、視覚認識にはいろんなルートがあって、一次視覚野を通らない皮質下(古層の脳)経由の視覚処理システムが有るためだそうです。

今までこの現象を調べるのにヒトの表情を提示させてその反応を見るという実験が多かったそうですが、今日取り上げる論文はヒトの情動的な動作(嬉しそうな動作を示した像)を見せてその時の反応を見るという方法で調べたものです。

結果から言うとやはり、皮質盲の患者さんは見えないはずの視界に提示された情動的な身体像もある程度認知でき、またそれに対応する脳活動(MT野、視床枕)の上昇も見られるそうです。

こういったことから情動的な身体像の認知というのは必ずしも一次視覚野を通る必要がなく、裏みち的な皮質下経路でも認識されうることが示されています。

【要旨】

「皮質盲の患者は実際に意識することは出来ないにもかかわらず相手の表情を知覚できることが報告されている。今回われわれは一次視覚野がなく、そのため意識的な視覚認識ができない場合においても情動的な身体言語が知覚されうることを実験で検証した。実験では片側の皮質盲を呈する患者の盲側側に情動的(嬉しそうなもの)な身体像、あるいは中立的な身体像を提示しその反応を計測した。結果幸せそうな身体像を盲側に提示した場合、選択的にMT野と視床枕の活動の上昇が見られ、中立的な画像を提示した場合には運動前野の活動の上昇が見られた。このことから一次視覚野がない場合でも情動的な身体動作の認識が可能であることが考えられた。」

参考URL:Non-conscious recognition of emotional body language.



コメント

リアクションが大事というけれど

ただ呟くだけだったらなんにも面白くないような何かでも、リアクション次第で面白かったり面白くなかったりして

こういうのは身体動作にいろんなメッセージを乗せうるからだろうけど

何かの意味を伝えるのは何も言葉の専売特許ではなく、よく言うように声のトーンや体の動きというものも大きいんだろう。

ミュージカルなんかはこの体の動きを乗せることできっと全脳的な揺さぶりをかけるのだろうし

ヒトラーの演説もきっとそうなのだろう

情動は人生の塩気にも似て、ほどほどがいいんだろうなと思います。なければ味気なく、ありすぎると食えたものではない。

情動の取り過ぎには注意しましょう(-_-;)

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