
「やばそう」の脳科学:扁桃体と頭頂葉
「なんとなくやばそう」というのは、いろんな場面で出てくる感情なのではないかと思います。
リハビリの仕事であれば、これ以上患者に負荷をかけたらやばそう、
後輩の指導であればこれ以上きついこといったらまずそう、
台所で煮物を作っていれば、もうそろそそ火を止めなけれければまずそう、
気難しい上司に話しかけるのであれば、今聞きに行ったらまずそう。
いろんな場面で「まずそう」「やばそう」という感情が喚起されると思うのですが、こういった感情はどうやって生起されるのでしょうか。
大事なのは「なんとなく」の部分なのではないかと思います。
煮物のグツグツ音が75ヘルツ以上になっている、
だとか
上司の左の眉毛が通常比25%上に上がり、かつ一分間あたりの呼吸数が8%増大している
だとか、そういう具体的な認知ができているわけではない。
ぱっと見て、ぱっと聞いて、「なんとなくやばそう」という感情が湧いてくる。これはどういうわけでしょう。
今まで繰り返し取り上げてきたように、視覚でいけば、脳に情報が上がってくるのは、大きく分けて二通りの経路があるそうです。
一つは一次視覚野を通ってくる皮質経路
もうひとつは一次視覚野をショートカットして頭頂連合野に届いてしまう皮質下経路、この2つがあるそうです。
今日取り上げる論文はこのことについて研究したものです。
実験では盲視患者に見えていないはずの視野に不快刺激とペアにして視覚刺激を提示し、その前後での頭頂連合皮質の活動を調べています。
不快刺激と連合して学習された視覚刺激を盲視側に見せたところ、なんらかの不快感を示し、かつ頭頂連合野の活動にそれに応じた変化があったことが示されています。
このことから扁桃体が皮質下経路の連絡のハブになって頭頂連合野の活動を高めているのではないかということが述べられています。
【要旨】
「意識的に知覚されない刺激に対する情動反応の神経基盤を調べるために皮質盲の患者を対象に実験を行った。実験では盲視側に視覚刺激を提示し、不快刺激と連合学習をさせ、その前後での脳活動の変化を機能的MRIで測定した。連合学習成立後は視覚刺激によって頭頂連合野の活動が増大し、その程度は主観的な不快感と関係していた。このことから身体的な情動状態を示す皮質活動は現実の情動を反映していることが示された。」
参考URL:Parietal somatosensory association cortex mediates affective blindsight.
コメント
こういうのは俗にいう「直感」みたいなものなんだろうか。
一目惚れなんかも直感の範疇に入るのだろうか。
生存、生殖を旨とする皮質下領域がイエスと言ってるんだったら、一目惚れ反応は素直に聞いといたほうがいんだろうな。
下手な打算よりも素直な心を大事にしよう(-_-;)
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