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失語症とミラーニューロンの関係性とは?

今日取り上げる論文は、失語症になると、動作の理解能力も低下するかどうかについて調べたものです。

結果から言うと、失語症患者は言語能力だけではなく、ジェスチャーを読み取るといった、動作の意味を理解する能力も低下する傾向があることが示されています。

左半球損傷によって、ことばが使えなくなったり(失語症)、ものが使えなくなったり(失行症)といった症状が出ることは古くから知られており、1860年には「失象徴症“asymbolia”」という名前で記載されているそうです。


失語症にしても失行症にしても、ミラーニューロンシステムの障害として捉えられるのではないか、認知と動作は同じ神経基盤でなされているのではないかということが述べられています。

【要旨】
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「今回、失語症患者の動作理解の障害が、言語的にあるいは非言語的にどのように発生しているのかについて、その損傷領域との関連も含めて調査した。対象は29名の左半球損傷患者と18名の対照患者で、実験では動作を示した写真(対象物を除いた写真)もしくは同様の動作を言語で示したもの(動作の目的語を除いた文章)とペアになる対象物の写真もしくは単語を組み合わせる課題を行った。重度の失語症患者では言語課題と非言語課題の成績は大きく異なっており、言語課題と非言語課題の間に密接な関係は見られなかった。パントマイムの理解能力の低下は下前頭葉、運動前野、運動野、体性感覚野の一部と被殻の損傷と関連しており、文章理解能力の低下は上側頭葉前部、島皮質前部、および下頭頂小葉前部の損傷と関連していた。損傷の大きさと障害の程度には関連が見られなかった。パントマイムの理解課題の結果から、ヒトの“ミラーニューロンシステム”が非言語的な動作理解に関わっていることが考えられた。言語的な動作理解に関しては文章や話し言葉の処理に関わる領域の損傷に加えてミラーニューロンシステムを構成する頭頂葉領域の損傷も関連していることが考えられた。これらの結果から言語や動作の生成に関わる領域は、言語や動作の理解にも大きく関わっていることが考えられた。」

参考URL:Action comprehension in aphasia: linguistic and non-linguistic deficits and their lesion correlates.

コメント

見たもの、聞いたもの、触ったものが、何かしらの意味のある対象として認識されるというのは、よくよく考えてみれば不思議な事だと思います。目の前の畳を見れば座ることができて、独特の肌触りをもった、和風な床の上に敷くものといった畳として、ヒトの脳は認識する。い草の集合としてでもなく、炭素原子の集合でもなく、何らかの意味を持った対象、一つの機能的なまとまりとして、畳というものを認識する。世界を意味のあるものとして切り出すのは、ヒトでなくてもカメやイヌでもできているような気がする。彼らは彼らなりに世界を秩序だてて認識しているように見える。ヒトの認識とイヌの認識が違う点はどこなんだろう。多分、ここにないものを、今あるもののごとく示せることじゃないだろうか。イヌは昨日見つけたエサの美味しさを他のイヌに伝えることができない。対象を象徴化するミラーニューロンシステムの働きも大事だけど、過去も未来も自由自在に「今」に持ってこれる、そんな能力も大事なんだろうなと思ったりします。

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