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うっすらぼんやり情報と扁桃体の関係とは?

勝負に勝つには時と場所を選ぶことが大事だと言われています。

営業向きの人が研究職についたらしんどいでしょうし、その逆もそうでしょう。

戦乱の世の中ではじめて実力を発揮できるような人もいれば、安定した世の中で成果を出すのが得意な人もいるでしょう。

自分の性質を見極め、「ベンチャーで営業やろう」とか「一部上場の安定企業で研究職を」とか、そんなふうに自分の勝負所を抑えた上で勝負できる人というのは割合負けることも少ないのではないかと思います。

そんなことを考えた時に、仮にお化け、幽霊というものがこの世に存在するとして、彼らはその性質上、影が薄いしぼんやりしているのですが、彼らが比較優位に立てる場所、目立てる場所というのはどこになるのでしょうか?

一つは「明るい場所より暗い場所」

もう一つは「賑やかな場所より人っ子一人いないような寂しい場所」

なのではないかと思います。

つまり夜中の墓地のように暗くて寂しい場所で戦えば、他の対象物を押しのけて「ほぅら、お化けだぞー」といってニンゲンに認識してもらえる。

これが真昼のディズニーランドのようなだと、お化けはどうやっても他の視覚対象、綺麗なお姉さんや美味しそうな食べ物、いろんな玩具なんかと勝負できない。きっと人の注意というのはそっちのほうにかっさらわれてしまう。

そう考えると、ニンゲン同様、お化けも自分の比較優位を検討して然るべき場所で勝負しているのではないのだなあと思います。

前振りが長くなりましたが、今日取り上げる論文はお化けのようにぼんやりした画像がどんな時に人の目に止まるかを検討したものです。

普通に考えるとうっすらぼんやりしたよりも、はっきりくっきりしたもののほうが目に止まりやすい。街を歩いていても、ぼやっと、だぶっとした服よりも、アメコミのように原色で直線的な服を着た人のほうがきっと目にも止まりやすい。

これが時と場合にうっすらぼんやりのほうがしっかりと認識されることがある。これはどういう時でしょうか?

一つはこのうっすらぼんやりが蛇や死体、恐怖表情など脅威的な視覚情報である場合。

こういった時ははっきりくっきりを押しのけて、うっすらぼんやりのほうがしっかりと認識される。

脅威的であればなんでもいいというわけでもなくて、生き物であるということがまた大事なようです。

例えば断崖絶壁の崖っぷちだとか、包丁のような生き物ではないものであれば、それが脅威的であってもうっすらぼんやりは、はっきりくっきりに勝つことができない。きっと「去年処分した軽トラックの幽霊だぞー」といってうっすらぼんやり現れても、多分だれからも相手にされない。

さらにもうひとつは見る側が最初からビビっている事が大事で、何か怖いものが出るんじゃないかと腰が引けている時には、うっすらぼんやりは、はっきりくっきりを押しのけてしっかり認識してもらえる。

以上のような条件が揃えば扁桃体の働きもあって、うっすらぼんやりの視覚情報でも競争を勝ち残って人の目にとめてもらいやすくなるそうです。

そう考えると、相手がビビリそうな場所やタイミング、カタチというものを見計らって出てくるお化けの戦略というのは、ヒトに認識してもらうための方法として極めて合理的なものなのだなと思います。

 

【要旨】

「低空間周波数による視覚情報は扁桃体を迅速に反応させ危険刺激に対する行動を促すことが知られている。今回の実験では周波数を変え、また生物と非生物を提示した時の反応について検証を行った。被験者は実際の侵害刺激によって条件付けされた視覚的脅威刺激を検出する課題を行い、その反応時間を測定した。結果、目の粗い低空間周波数であっても恐怖条件付けがされた状態であれば視覚的脅威刺激は十分に認識されることが示された。さらにこのような効果は非生物よりも生物を対象にした場合において顕著に見られた。通常であれば閾値上の刺激では高周波数のほうが認識されやすいにも関わらず以上の結果が示された。」

参考URL:Are coarse scales sufficient for fast detection of visual threat?



コメント

ヒトがナウマン象やサーベルタイガーといった自分より強くて大きい動物を押しのけて万物の生物の上に立てたのは、きっとこの戦略立案能力があったからだろうなと思います。時と場所を選べば自分より強い生き物に勝つことができる。

お化けでさえ時と場所を選んで頑張っているんだから、もう少し戦略的に生きる努力をしようと思います(-_-;)

自分の比較優位を知ろう(T_T)

 

 

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