
顔面情報の処理:低空間周波数と高空間周波数
「陰影がある」という表現があります。
昔高校の美術の教科書に出てきたレンブラントの絵を思い出してもらえばイメージがつきやすいと思います。
闇の中から光が立ち上がってくるようなあれです。
普段目に見える景色というのはこのレンブラントの絵のように陰影のあるものなのではないかと思います。
ピカソやマティスの絵のように原色のメリハリのあるようにしか見えないという人は多分いなのではないかと思います。
でもこの陰影というのは具体的にどういうものなのでしょう?
レンブラントの絵の暗くてぼんやりしたところはどういったふうになっているのでしょうか?
おそらく目が粗い書き方になっているのではないかと思います。これを逆に言えば目の粗いところというのはぼんやり見える。
ではレンブラントの絵の光の部分、つまり明るくてくっきりしたところというのはどのように描かれているのでしょうか?
おそらく目の細かい筆の入れ方になっているのではないかと思います。これを逆に言えば目の細かい部分というのはくっきりはっきり見える。
こんなふうに目に見える景色というのは目の粗いぼんやりした部分と目の細かいクリアな部分の両方からできている。この2つを同時に認識することで陰影のある画像というのが立ち上がってくるのではないかと思います。
この目の粗い部分というのは低空間周波数といい、目の細かい部分は高空間周波数と呼ばれるようです。
今日取り上げる論文はこの低空間周波数(ぼんやり成分)と高空間周波数(くっきり成分)では脳の中で違う経路で処理されるけれども最終的にはひとつの領域にまとめられて認識されることが示されています。
【要旨】
「今回、顔情報の異なる空間周波数が脳の異なる領域で処理されているかについて検証を行った。実験では被験者は異なる対象をそれぞれ異なる空間周波数で表現したものを重ねあわせたものを提示された。様々な条件でこの重ね合わせ画像を見ている時の被験者の脳活動が機能的MRIによって評価された。結果、高空間周波数に対応して右下後頭回、左下側頭回の反応が見られた。それに対し低空間周波数に対応して両側の中後頭回に反応が見られた。また高空間周波数および低空間周波数のいずれに対しても右紡錘状回の反応が見られた。その後の連結性解析では紡錘状回の反応に対して中後頭回(低空間周波数)、下後頭回および下側頭回(高空間周波数)からの直接の影響が示された。これらの結果から顔情報の異なる空間周波数は脳の異なる領域で処理され、それぞれ右紡錘状回に情報が送られ統合されることが考えられた。」
参考URL:Distinct and convergent visual processing of high and low spatial frequency information in faces.
コメント
病院で仕事をしていると
よほど目の悪いおじいさんおばあさんでも、相手の表情を読み取るにはそんな苦労がないような感じがして
これは表情という情報のぼんやり成分(低空間周波数成分)というのは悪い目であっても処理することが出来て
情動的な表情というような情報ははっきり成分(高空間周波数成分)とぼんやり成分(低空間周波数成分)では、ぼんやり成分の処理経路優位で認識されるため
目が悪くても人の顔色を読み取るにはそんなに難がないのかななどと思いました。
私は目が良くても人の顔色を読み取れませんが・・・(-_-;)
扁桃体を鍛えよう(T_T)