フォローする
【脳科学専門ネット図書館】会員募集〜ワンコインで世界中の脳科学文献を日本語要約〜

「社会的認知と脳:メタアナリシス」

社会に生きるということはなかなか大変です。いうことやることがすべてそのまんま取れれば楽なのですが、往々にしてそうもいかないからです。

お茶を出して相手に早く帰ってと促す例でもないのですが、相手の表面上の意図(お茶をどうぞ)と本当の意図(そろそろ帰ってほしいな)というのは別々で、社会で生きるときにはこの両方の理解が求められるのですが、脳というのはこの二枚舌をどのように理解しているのでしょうか。

今日取り上げる論文は心の理解が脳の中でどのようになされているかについて過去の研究を元にして詳しく調べたものです。

結論を述べると脳の中には短期的な意図と長期的な意図の読み取りの2種類の読み取り機構があることが示されています。

短期的な意図の読み取りというのは相手が懐に手をやっているのを見てたばこを吸おうとしているのかなと思ったり、キョロキョロモジモジしているのを見てトイレを探しているのかなと思ったりというようなそういった心の読み取りです。

長期的な意図の読み取りというのはこういった身体的な運動の観察だけでなく、その人の性格や特徴を考えると、本当のところ彼/彼女はこう考えるだろうなというような心の読み取りです。彼のことだから彼女にふられて今頃泣いているだろう、あるいはカラッとしてもう気にしてないだろうとかそういった感じの心の読み取りではないかと思います。

この2種類の心の読み取りシステムがあって社会的な心の読み取りが成り立つのではないかということが述べられています。

【要旨】
今回社会的認知に関わる脳活動を調べる目的で過去に行われた200本の機能的MRI画像研究を対象にメタアナリシスを行った。結果目標や意図、他者の欲求といった短期的な他者の心の意図の読み取りについては側頭頭頂接合部の活動が関わっていることが示された。それに対し自己や他者の普遍的な心の理解については内側前頭前野の活動が関わっていることが示された。短期的な他者の心の読み取りにも内側前頭前野の活動が関わっていることも示されたが、これは短期的な他者の心の読み取りについても長期的で不変的な他者の心の理解が関係するものと考えられた。以上のように社会的認知に際して側頭頭頂接合部と内側前頭前野の2領域の活動が重要であることが示された。またこの側頭頭頂接合部の活動はミラーニューロンシステムと関係し、感覚的な情報から相手の意図を理解する働きに関係し、内側前頭前野の活動はそこから得られた情報を長期的な情報と適合させ抽象的なレベルでの心の理解につなげていることが考えられた。

参考URL :Social cognition and the brain: a meta-analysis.

コメント

少し詳しいことを書くと、この短期的な心の読み取りにはミラーニューロンシステムを構成する側頭頭頂接合部が関係し

長期的な心の読み取りにはデフォルトモードネットワークの中枢である内側前頭前野が関わるようです。

実際場面ではどちらがどちらということもなく、お互いに情報をやりとりしてうまく理解しているようですが二枚舌、三枚舌を使ったり理解したりというのはなかなか頭をつかうんだろうなと思いました。

 

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

生活リズムでいきいき脳を育てる 子育ての科学98のポイント [ 相馬範子 ]
価格:1944円(税込、送料無料) (2019/8/4時点)

楽天で購入

 

 

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします