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ミラーニューロン:察する脳とその限界

「察する」という言葉があります。

職場で仕事をしていても、あるいは飲みに出かけてカウンターに腰を掛けていても察することに長けた人がいます。

今、自分が何をしようとしているのか、何を思っているのか先取りしてくれるような人というのはいったいどういう仕組みでそんなことをやってのけているのでしょうか。

人の動作の理解にはミラーニューロンネットワークというものが関係すると言われています。

これは図のように脳の中の視覚に関わる部分と運動に関わる部分、感覚の統合に関わる部分が結びついて、他者の動きを自分の動きとして処理するようなシステムです。

ボクシングの観戦に夢中になるとあたかも自分が戦っているように身体がピクピクすることもあるかもしれませんが、他者の動作をみることで自分の運動システムが響いてしまうような、そんなシステムです。

今日取り上げる論文はこのミラーニューロンシステムについての説明のものですが、このシステムというのは他者の意図の理解に関わるものではないかということが述べられています。

しかしながらこのミラーニューロンシステムだけでは相手の心を十分にくむことはできないということも述べられています。

これがどういうことかというと、このミラーニューロンシステムがあるから相手のふとした動作から相手が何をしようとしているか察することが出来るのですが、なぜそれをしようとしているところまでは理解できないということです。

これは例えば相手がティーカップに手を伸ばすのを見て、今から手にとって飲むんだということはミラーニューロンネットワークがあるおかげで理解できるのですが、

相手がなぜ飲むのか、のどが渇いているからなのか、会話の間を置きたいためなのか、お茶を出してくれた相手に気を使っているのかという判断はミラーニューロンネットワークだけでは処理できず、

脳の内側にあるデフォルトモードネットワークという「わたし」感覚に関係する別のネットワークの活動が必要になるということが述べられています。

上図参考URL:https://www.google.com/imgres?imgurl=x-raw-image%3A%2F%2F%2Ff527d8c82013b4ce9aa1c8b4751ac079f3947b9b013290efbdbddd95cb3cfec4&imgrefurl=https%3A%2F%2Fwww.asha.org%2FEvents%2Fconvention%2Fhandouts%2F2009%2F2491_Nancarrow_Diane%2F&docid=ke-1GLgYGayEQM&tbnid=zrQTIMjYJ_UzuM%3A&vet=10ahUKEwiaqO-TzsbiAhUIT7wKHeAHBVEQMwgrKAEwAQ..i&w=355&h=361&bih=792&biw=1731&q=human%20mirror%20neuron%20system&ved=0ahUKEwiaqO-TzsbiAhUIT7wKHeAHBVEQMwgrKAEwAQ&iact=mrc&uact=8

 

 

【要約】
他者の動作を見ている時、前頭―頭頂回路が活発になることが知られており、この鏡写し的な現象は数多く研究されてきた。しかしこのネットワークが他者の動作や意図の理解にどのように関わっているかについては多くの議論が残されている。近年のヒトやサルを対象にした研究からはこの前頭―頭頂回路が何をコードしているのか、また認知にどのように関わりうるのかとうことが示されている。他者の意図を読み取る機構は複数あるとは考えられるが、この前頭―頭頂ネットワークこそ一人称的な動作の理解に関わる唯一のシステムであると考える。

参考URL:The functional role of the parieto-frontal mirror circuit: interpretations and misinterpretations.

 

 

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