一次視覚野は前頭前野の影響を受けるのか?
今日取り上げる論文は一次視覚野と注意の関係についてのものです。
「視覚野」というのは、今まで見てきたようにいろんな領域の集合らしいです。
一次視覚野(V1)から始まって、V2、V3・・といろんな領域があって、それらが互いに連結していて背側視覚経路だとか腹側視覚経路だとかを作っている(下図)
そして、この視覚野と注意の関係ですが、
前頭前野(トップダウン的注意)→「視覚野」
の流れがあって、視覚野というのはトップダウン的注意の影響を受けることがいろいろな研究で言われているようです。
でも、この注意の影響を受けるのは、V2,V3・・・の高次視覚野と言われる領域だけで、視覚情報の入口である一次視覚野(V1)というのは注意の影響を受けないということが通説として長い間信じられてきたようです。
今日取り上げる論文は、一次視覚野がトップダウン的注意の影響を受けるということを様々な論文を元に論証したものです。
【要旨】
「ヒトの脳波を測定した多くの研究によって、一次視覚野はトップダウン的注意の影響を受けないという従来の考え方に疑問が呈されている。本稿では視覚野の初期活動を示すC1とその活動について概説を行う。また人と動物についてなされた脳波と脳磁図を使用した研究から、一次視覚野が高次の認知機能の影響を強く受けることを示す。最後に初期視覚野にトップダウン的な注意が働く過程についての理論的枠組について提示する。」
参考URL:Top-down effects on early visual processing in humans: a predictive coding framework.
コメント
視覚経路には空間情報を主に処理する背側経路と、意味情報に主に関わる腹側経路があるというモデルがあるのですが
この論文の中で、この腹側経路と背側経路というのは網膜の神経節細胞レベルで分岐が始まっている
つまり眼球の網膜がすでに背側・腹側経路のルートの中に含まれているということを読み
そう考えると、眼球というのは実際のところ外付けの脳みたいなものなんだろうかなどと考えました。
目は口ほどにものを言い、だとか目を見ればわかるだとかいろんなことばがありますが
彫刻家/画家でジャコメッティという人がいて
この人は、デッサンをする際にひたすら眼差しを捉えることだけに専心して、眼差しさえつかめたらもう作品はできたようなものといっていたらしいのですが
目というものを外付けの脳と捉えるのなら、たしかに本質を捉えるにはいい方法なのかなと思いました。
佐藤 洋平さんの投稿 2011年8月29日月曜日