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「共感的感情と身代わり的感情の違いについて」

近年日本語に出てきた言葉に「痛い・・」という表現があります。

見ていてこっちが恥ずかしくなったり切なくなったりしていることを平気でやっている人を見て沸き上がってくるような感覚をおそらく「痛い・・」というと思うのですが、脳科学的にこの「痛い・・」という感覚はどのように説明できるのでしょうか。

今日取り上げる論文はこの感覚について調べたものです。

英語では「痛い・・」に対応するような感情をvacarious emotion (身代わり的に感じる感覚?)と読んでいるそうなのですが、こういった感覚は広くは脳科学的にも共感感覚とも通じるものがあるということが述べられており

ただ共感感覚は見ている相手と自分の相手が同じような感情を持つのに対し、身代わり感覚は自分は痛いけど相手は平気という違いがあることが述べられています。

【要旨】

「身代わり的な経験の神経基盤」という特集の冒頭で編集者は身代わり的な経験とは他人が失笑を誘うような言動をしている時に感じる当惑した感情と説明してる。これと似た感覚として共感感覚があるが本稿ではこの共感感覚と身代わり感覚に違いについて神経学的にどのように異なるかについて議論を行う。結論としてはこの共感感覚と身代わり感覚の両方とも鏡像機能や心の理論が基盤になっていることが考えられる。これらの違いとしては共感感覚が観察者と当事者の二人の間に共通した感情が共有されているが、身代わり的感覚においては共有されていない点が上げられる。この共感感覚も身代わり感覚も社会的な相互作用を行う上で重要な機能であると思われる。

参考URL :On the distinction of empathic and vicarious emotions.

コメント

共感というのは例えば痛そうにしている人や辛そうにしている人を見るとこちらの方まで辛くなるようなそういう感覚だと思うのですが

以下に詳しい話をすると(興味のない方はスルーしてください)

人の気持ちを感じたり理解するにあたって脳は二つの方略を使うそうです。

一つは脳の中のモノマネシステムを使う方略で、これは眼で見た情報を自分の体で再現して、それによって引き起こされるであろう感覚をシミュレーションして相手の感情を理解しようとするもので

これは肩を落とした人を見て無意識的にその様子を自分の体でシミュレーションして理解するような、そんな感じのものです。このモノマネシステムシステムは正しくはミラーニューロンシステムと呼ばれています。

もう一つの方略は理詰めで相手のことを考えることで、相手の置かれている状況、性格、タイミングなどから探偵のように理詰めで相手の気持ちを推し計ることでこういう能力は”心の理論”と呼ばれています。

共感にしろ痛いと感じるにしろ上記二つのシステムが働いている点では似ているのですが一部(腹内側前頭前野)働きが異なることが述べられています。

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