フォローする
【脳科学専門ネット図書館】会員募集〜ワンコインで世界中の脳科学文献を日本語要約〜

脳における妄想とサンプリング

「認知する」だとか「考える」だとかいいますが、この認知だとか考えの本態というのはいったいどういうものなのでしょうか。脳でいけばどのへんがどう活動して考えだとか認知だとかの現象が立ち上がってくるのでしょうか。

ヒトの脳というのは何もしていない時も脳の内側面を中心にグツグツと活発に活動していることが知られています。

この領域の安静時のグツグツ活動はデフォルトネットワークとも言われているようですが、この時脳は何も考えていないというとそんなことはない。

ポケーっとぼんやりしていても頭のなかは今日の晩御飯の献立や、明日の仕事の段取り、昔の思い出、未来への妄想など、フル回転でいろんな考えが巡っています。

さてこの晩御飯の献立や昔の思い出、未来の妄想というのはいったいどこにあるのでしょうか。

目の前の何処かにあるものでなければ、これはおそらく脳が記憶を元にして作り上げた情報でしょう。

音楽ではサンプリングといって既存の曲を切り貼りして新たな音楽を作る手法があるそうですが、回想、妄想、予定といったぼんやり時の脳の自発的な活動は既存の記憶を基にしたサンプリング活動ともみなせるのではないかと思います。

今日取り上げる論文はデフォルトモードネットワークについてものですが、図の緑色の矢印で示されるように海馬領域の活動を認めており、安静時の自発的な思考の流れというのは海馬が関与しているのではないかということが述べられています。

上図参考URL:https://www.mitpressjournals.org/doi/abs/10.1162/0898929042568532

【要旨】

難しい課題を行っている時と較べて、簡単な課題や何もしていない時に活動が増加するような神経活動について引き合いに出されるのが非活性化と呼ばれる現象である。この領域はデフォルトモードネットワークと呼ばれ、後帯状皮質や内側前頭前野を含む複数の領域によって構成されていることが先行研究によって示されている。以前受動的な感覚課題を用いて実験を行った際は初回の刺激ではこのデフォルトネットワークを検出できず、二回目の刺激で検出できていた。今回の実験では独立要素分析を行うことで初回も二回目も共にデフォルトネットワークを検出することが出来た。さらには課題を行っている時も休息期間中もともにデフォルトネットワークの活動が継続して検出された。このデフォルトネットワークには海馬領域が含まれており、この海馬の活動がデフォルトネットワークの認知活動に関与していることが考えられた。今回の実験からデフォルトネットワークは課題が簡単なものであれば安静時中も課題遂行中も継続して活動することが示された。

参考URL:Default-mode activity during a passive sensory task: uncoupled from deactivation but impacting activation.

 

 

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします