
「視覚刺激がない中でも注意を向けているときはヒトの視覚野の活動は増加する」
私達は普段生活していていろんなものを見ますが、この「見る」という仕組みは一体どういうふうにしてなりたっているのでしょうか。
ちょっと考えても視界に入る情報というのは莫大です。目の前にパソコンがあってその周囲に本があって絨毯があって書類が散らばっていて、かつその各々が色んな色や形といった情報を含んでいます。こういった視界に入る情報全てをコンピューターに詳細に入力しようとしたらその情報量は莫大なものになるでしょう。
にも関わらず私達が普段何かを見ている時というのは、ごくごく限られた対象を必要十分な解像度で見ているわけで、それゆえこの文章もおそらく自然に読まれていると思うのですが、こういった「見る」というアクションにはどういった機能が必要でしょうか。
ひとつ考えられるのは対象に視点をロックオンするような機能でしょう。眼球をうまいこと動かして視界の中心がディスプレイ上の文字列に当たるように調整する、こういった機能が必要でしょう。
もう一つはいろんな視覚情報を取りまとめる機能も必要でしょう。目に入った視覚情報は色システムや形システム、意味システムといったいろんなシステムで同時並行処理されますが、こういったいろんな情報をうまく取りまとめるような仕組みがなければ今読んでいるこのディスプレイ上の文字列も意味ある言葉として認識されないでしょう。
こんなふうに「見る」というアクションにはいろんな脳機能がついて回ると思うのですが、今日取り上げる論文はこの「見る」機能について詳しく調べたものです。
実験ではもぐらたたきのように、ひょっとしたらある対象(もぐら)が視界に出てくるかもしれないというような状態で脳がどんなふうに活動するかを探ったものですが、結果を述べるとまだもぐらが出ていないような状況でも目を動かすシステムや視覚情報を取りまとめるシステムはよく活動していることが示されています。
もぐらたたきでもぐらをぱっと見つけられるような背景にはこういった仕組みがあるのかなと思いました。
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ポイント
通常何かに視覚的注意を向けているときは、視覚野の中でも注意対象を処理する領域の活動が高まることは知られている。
今回の実験では被験者が視覚対象の出現を予期しているが、まだ実際には見てはいない時の脳活動について調査を行った。
結果、実際に見ていない時であっても視覚処理に関わる前頭葉と頭頂葉の活動が高まることが示され、また後頭葉の視覚野でも活動の増加が認められ、これは前頭葉と頭頂葉の視覚処理に関わる領域のトップダウン的な処理の影響を受けていることが考えられた。
補足コメント
注意に関する動画でよく知られた動画を逆手に取ったものです。有名な元ネタはこっちですが
落ちは動画のキャプチャーで確認して下さい(´・ω・`)