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脳卒中患者の模倣能力と脳機能

今日取り上げる論文は模倣に関するもので、脳卒中患者を対象に模倣課題を行わせ、模倣の実行がどのような経路でなされているかについて調べたものです。

何かを見て模倣をするときには二つの経路があるそうです。

一つはどんな動作なのかその意味を理解してから模倣をする意味経路(間接経路)、もうひとつはどんな意味なのかは置いといて、とりあえずその形をそのまま模倣する直接経路のふたつがあるそうです。直接経路は最終的に間接経路と合流するそうです。

これを模式的にかくとこんな感じになるそうです。

→→→→意味経路(間接経路)→→→→→→→→→→→→→→

動作入力→視覚解析→長期記憶→ワーキングメモリ→動作出力
↓           ↑
直接経路→→→→→→→→→

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実験の結果から意味のあるジェスチャーを模倣しづらいケースでは意味理解を経由する経路の損傷が関係し、意味のないジェスチャーを模倣しづらいケースでは、逆に直接経路の損傷が関係しているのではないかということが述べられています。

また実験の結果から基底核も模倣の実行に大きな役割を果たすのではないかということが述べられています。

【要旨】

「先行研究から模倣を行う二つの経路が示されている。一つは慣れ親しんだジェスチャーを模倣するときの意味処理に関わる間接的な経路、もうひとつは新奇なジェスチャーを模倣するときの前-意味的で直接的な経路である。今回この二つの経路の存在を確かめる目的で左半球損傷患者と右半球損傷患者を対象に模倣実験を行った。実験では有意味動作と無意味動作がそれぞれ20例ずつ、無作為な順序で混ぜあわせられて提示し、模倣することを求められた。その後別の日に、それぞれ有意味動作と無意味動作のそれぞれが別々に分けられて提示され、同じく模倣することを求められた。実験前の仮説では、無作為な順序で有意味動作も無意味動作も混ぜあわせられた実験では、被験者はいずれの場合も一貫して直接的な経路で情報を認知することが考えられた。それに対し、別々のまとまりで提示するブロックデザインによる方法では有意味動作は関節経路、無意味動作は直接経路でそれぞれ情報を処理することが考えられた。結果は予想通りで混ぜあわせられた課題では32名の被験者全員に有意味動作と無意味動作の模倣の乖離は見られなかったが、ブロックデザインによる課題では8名の患者に乖離が見られた。さらにこの内2名においては典型的な有意味動作と無意味動作の間での解離が認められた。このような結果から、私たちは無意味動作の理解が優れているような場合は意味処理に関わる関節経路が損傷されていて、逆に有意味動作の理解が優れているような場合は前-意味的な直接経路が損傷されているのではないかと考えた。乖離を示した6名の左半球損傷患者では上側頭回と角回が損傷されており、同じく乖離を示した2名の右半球損傷患者では淡蒼球と被殻に損傷が見られていた。これらの損傷状態は過去に発表された神経心理学的研究の結果と一致したものとなった。」

参考URL:Neuropsychological evidence for a strategic control of multiple routes in imitation.

コメント

意味のない動作として真似するときには
見る→真似して動く
ですが

意味ある動作を真似するときには
見る→意味を理解する→真似して動く
になり

つまり2種類の模倣に際しては意味処理ルートを通るかどうかの違いがあるようです。

さらにそれだけでなく脳の深い部分にある被殻や海馬といったものも模倣に大きく関係するそうで、単純に左半球損傷うんぬんで捉えられないのではないかということが述べられています。

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