
「自伝的記憶、未来への展望、ナビゲーション、心の理論、デフォルトモードに共通する神経基盤:量的メタアナリシス」
人間が持つ特殊な機能の一つに「ものがたる」というものがあります。
ものがたるというと何だが大それていますが自己紹介なんかもよくよく考えてみれば自分が来た道を語るという点で一つの物語としてとることができるのではないかと思います。
しかしながらヒトが何かを語っている時、脳の中では一体どんなことが起こっているのでしょうか。
脳というのはいろんな機能が搭載されていますが、その中でも一風変わったものにシミュレーション機能というものがあります。
これは今日一日どうやって過ごそうかなとか去年の今頃何やってたかなとか、あるいは彼女は今どんなふうに感じているんだろうだとか、つまりは「今、ここ」をはなれていろんなことを考えるようなときに働く機能のようです。
脳の中の手持ちの記憶を貼りあわせて過去や未来や人の心を組み上げる、そんな機能が脳の中にはあるようですが、今日取り上げる論文によると、ヒトが何かを語るときというのはやはりこのシミュレーション脳が働いているということが述べられています。
「語る」という行為は地球上のどこにでもみられる普遍的な行為ですが、ヒト科の持つ基本的なスペックとして搭載されている何かなのかなと思いました。
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ポイント
脳の中でも中枢的なネットワークは想起や展望、ナビゲーション、心の理論に共通して活動することが報告されている。
中枢的なネットワークと目されているのは内側前頭前野、内側側頭葉、内側および外側頭頂葉であるが、このネットワークはまた自己投影や情景の構築にも関わっているとされている。
過去になされた研究のメタアナリシスを行ったところ、自伝的記憶やナビゲーション、心の理論やデフォルトモードといったものは共通の神経基盤を有していることが示された。
また従来報告されていた内側側頭葉、楔前部、後帯状皮質、嗅皮質、頭頂側頭接合部といった領域に加え外側前頭前野と視覚野も上記の認知活動に関係することが示された。
補足コメント
『有史以来』という言葉がヒトの歴史を語るときによく出てくるけど
「語る」能力、つまり物語を伝承する能力を身につけた時がヒトが人になった時なのかなと思います。その意味で有史以来をヒトの歴史と捉えるのは理にかなっているのかなと思います。