「ヒトの神経組織回路網におけるリッチクラブ的構成」
ビジネス書をひらけば当たる言葉にパレートの法則というものがあります。
これは別名20対80の法則とも言われていて、どんなものでものでも本当に大事なのは100のうち20だけというようなもので
これは例えば書籍の売上のほとんどは上位20%のタイトルだけでなされているだとか、世界との富のほとんどは上位20%の人たちが握っているだとか、つまり上位20%が全体のほとんどを決定してしまうという現象だと思うのですが、はたしてこの原則は脳に関しても当てはまるのでしょうか。
今日取り上げる論文は脳のネットワークについて詳しく調べたものです。
結果を述べると脳の中には“リッチクラブ”というべき脳の中のエリート集団があることが示されています。
これは脳の中の様々な部分の中でもずば抜けて広いネットワークと影響力を持っているという点でエリートなのですが、このエリート同士が密にチームを組んで脳の中核構造を作り上げていることが示されています。
【要旨】
ヒトの脳は様々なネットワークから構成されているが、その中でもとりわけ密に連絡し合い総合的なネットワークの中心になるネットワークが存在することが報告されている。このネットワークについては病理学的見地から機能的、解剖学的に様々な研究がなされてきている。本研究では皮質および皮質下のこれらのネットワーク構造を明らかにするために21名に被験者の全脳的なネットワークの解析をテンソル拡散画像を用いて行った。結果互いに密な連絡を持つ12の領域からなる中核的なネットワークが抽出された。これは両側の楔前部、上部前頭葉、上部頭頂葉、海馬、被殻、視床で構成されていた。本稿ではこの中核的ネットワークの情報統合における役割やその頑強性について議論する。
参考URL:Rich-club organization of the human connectome.
コメント
脳の中にはいろんなシステムがあります。
それは視覚システムだったり運動システムだったり注意システムだったりいろいろなのですが
このリッチクラブ的ネットワークというのはシステム同士をうまく引き合わせるのに役だっているそうです。
これは金持ちクラブが見知らぬ二人をうまく引き合わせるような感じで
視覚システム⇆リッチクラブ⇆注意システム
あるいは
視覚システム⇆リッチクラブ⇆注意システム
⇅
運動システム
という感じでシステム同士を結びつけるいわば脳の中のファシリテーター的な役割をしているのではないかということが述べられています。
それゆえ病気や怪我でこのリッチクラブシステムが崩れると一気にシステム全体が崩れてしまう、そんな現象があるのではないかということが述べられています。
|