フォローする
【脳科学専門ネット図書館】会員募集〜ワンコインで世界中の脳科学文献を日本語要約〜

ヒトはどこまでサルか?

生き物の脳というのは進化に従ってどんどんどんどん大きくなり、サルを経由しヒトに至って最大になったとも言われています。

キリンの首が進化の過程で長くなるのは何となく分かります。首が長いほうが高いところの葉っぱが取れるからでしょう。

肉食獣の足が進化の過程で速くなったのも何となく分かります。脚が速いほうがより多くの獲物を捕まえることができるからでしょう。

しかし進化の過程で脳そのものが大きくなる必然性などあるのでしょうか?

脳というのは相当エネルギーを使う臓器だったと思います。ヒトであれば全代謝量の20%が頭の片隅にある脳だけで使われるという話を聞いたことがあります。どんな必然性があって脳というのは大きくなったのでしょうか。

社会脳仮説によると、この脳が大きくなったのは、身内同士での争いに打ち勝つ過程で大きくなったということが言われています。

これはどういうことかというと、同じ社会に住む生き物だったら、賢く立ちまわる個体のほうが、より多くのエサを得て、より多くのメス(オス)と交尾し、より多くの子孫を残せる。

結果、より賢い(脳の大きい)個体が勝ち抜いていって、結果どんどん脳が大きくなって、ヒトで最大に至ったというものです。

今日取り上げる論文は様々な霊長類社会について、その社会的特徴について示したものです。

様々なサルにはそれぞれの文化様式があり、地位の高さに基づくカースト制のようなものが存在すること(地位の高いメスザルの娘は、地位の低い親メスザルに対して威張る)、またある種のサルはボスザルとどれだけ良好な関係を持つかによって、集団間での交尾のしやすさ(ボスザルからの邪魔立てが少なくなる)が決まってくること、など様々な事例が取り上げられています。



【要旨】
「霊長類において進化圧がより大きな脳への変化を導いたことは興味深い知見である。社会脳仮説によると、選択圧はより大きな脳を選好し、その結果社会生活に対応しうるだけの複雑な認知を可能にしたとされている。この仮説は、グループの大きさは脳の大きさに比例するという証左によって支持されている。しかしこの複雑な認知と個体の適応度の関係については明らかにされていない。実験室やフィールドワークでの研究の結果からは、この複雑な認知が霊長類の社会的行動の基盤になっていることが示されている。さらに社会関係の質が個体の適応度の決定的な要因になっていることが多くの研究によって示されている。」

参考URL:Social components of fitness in primate groups.

コメント

サルに身分があるというのは驚きでした。

身分の低い出自のサルはエサにもありつきづらいし、メス(オス)にも相手にされにくい。

身分の高いサルの子供に生まれれば、その子の能力とは関係なくモテモテのウハウハ(古いですね)で、エサも潤沢で

サルもそれなりに理不尽な世界に住んでいるんだなあと思ったりしました。

自分が住んでいる街の市長選が近く、外来でリハビリの仕事をしているといろんなゴシップが耳に入ってきます。

多くは色と絡んだものなのですが、この政治と下系のゴシップというのがペアになっているのが昔から不思議で、

別に政治能力と浮気や不倫なんて関係ないのに、なんで世の人はあんなに囃し立てるんだろうと、ずーっと不思議に思っていたのですが

この論文を読んで、ある種のサルにおいては権力、地位というものが、生殖、繁殖とガチで結びついているのをしって

権力のシフト(選挙)でセクシャルな話題が上がってくるのも、サルの子孫である以上しょうがないんだろうなと思ったりしました。

生物は自分のより強い繁殖を求め、そこに権力闘争やヒエラルキーというものが生まれ

人間も生物である以上、争いや不平等というものは原理的にずっとついてくるのかなと思ったり

あるいは神の下は皆平等という、非動物的なシステムを作る凄さを感じたり

あるいは平等を謳う宗教組織でもそこに地位、序列を作る動物らしさを思ったり

動物とかヒトとかなんなんだろうと思ったりします。

サルのカースト制度を構築している社会性なんて、その実そんなえらいもんじゃないと言ったらひねくれすぎでしょうか。

むずかしいです(-_-;)

 

 

 

※一日一つ限定ですが、個人や非営利団体を対象に脳科学に関するご質問・調査を無料で行います。興味のある方はホームページの「お問い合わせ」ボタンからどうぞ。

 

 

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします