
イントロダクション:「社会脳」とはなにか?
「社会脳」という言葉があるそうです。
「社会」と「脳」で「社会脳」、英語だとsocial brain, なんだかいまだに頭に馴染みません。
味覚脳とか、嗅覚脳、触覚脳とかだとなんとなくイメージはしやすい。
でも「社会脳」っていわれても、やはりいまいちピンとこない。ひょっとしたらsocialに社会という言葉を当てるところからして間違っているのかと思って調べてみたけど、やはり英語でもsocial と社会の意味はそんなにかけ離れてもいない。
こんなはっきししない心持ちで、今日からしばらく社会脳について取り上げていきますがよろしくお願いします。
ヒトは社会的動物とも言われます。また嘘かホントか分かりませんがヒトは一人では生きていけないという言葉ももっともらしく語られます。
でも、そもそも社会とは何でしょうか?
家族は最小の社会とも言われています。
父親がいて母親がいて、子供やおばあさんがいて、それぞれにそれぞれの役割がある。
お父さんは外で働いてお金を稼いで家族に分配し、子供は無償で受け取る代わりに目に見えない希望とか期待とか言う無形の報酬を親に与える。
そう考えると、社会というのは「報酬のやり取りを機能として持つヒトとヒトとのつながり」といふふうにも理解できそうです。
今日取り上げる論文は社会脳についての総説になります。
ヒトが報酬のやり取りを行うにあたって、相手の心持ちを知らなければならないと思うのですが、これには無意識的になされるものと意識的になされるものの2種類があるのではないかということが述べられています。
例えば同情するなんていうのは、どちらかというと無意識的なココロの理解でしょうし、勘案する、推測するというのは大分に意識的な心の働きでしょう。
このそれぞれのフレームワークとして
無意識的処理:
粗い感覚情報(上丘・初期感覚皮質)
↓
報酬の推定(前頭眼窩野・腹側線条体)
↓
動機付け(前帯状皮質)
↓
同情、道徳的感情(島皮質・腹内側前頭前皮質)
また意識的処理として
精細な感覚情報(紡錘状回・上側頭回)
↓
感受された動作の再現(ミラーニューロン・運動前野)
↓
心の理論(側頭頭頂接合部・内側前頭皮質・後帯状皮質)
↓
社会的推論(前頭前野)
というものが挙げられています。
【要旨】
「ヒトの持つ社会認知能力は突出しており、この能力があるゆえ私たちは他者の心、すなわち意図や感情、思考といったものを推測することができる。またこの能力がヒトの持つ文化や文明といったものを説明しうると思われる。この社会認知能力のある部分は無意識になされるものもあり、またある部分は文脈や方略にそって意識的になされるものもある。またこのそれぞれの背景となる神経基盤も近年の神経画像研究によって言及されてきている。本稿では社会認知能力の鍵となる能力とその処理過程について認知神経学的所見に関連付けて説明を行う。」
参考URL:Social components of fitness in primate groups.
コメント
social brainで検索をかけて、比較的新しいので引用件数がいちばん多いのを引っ張って来ました。この論文で引用されている論文を頭から取り上げて行きたいと思いますのでよろしくお願いしますm(_ _)m。
なのでこの論文で示されているフレームワークを抑えておくと、この後でてくるいろんな論文が理解しやすいと思います。
この社会脳のsocial, 訳語を探していたら「懇親」という当て方もあるそうで
社会脳より「懇親脳」としたほうが何となく腑に落ちるようなきがするのだけれどもどうなんだろう。
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