フォローする
【脳科学専門ネット図書館】会員募集〜ワンコインで世界中の脳科学文献を日本語要約〜

リーチ動作の制御には何が関わっているのか?

なにかに手を伸ばすというのは発達初期で見られる動作で、

長じてこれは何かを取ったり、打ち返したり、人間の生活には大変重要になってくる動作なのですが、

このなにかに手を伸ばす動作、リーチ動作というのはどのような脳機能によって支えられているのでしょうか?

今回取り上げるのはリーチ動作にはバランス感覚を司る前庭系と呼ばれる機能が関わっていることを示したものになります。

私達の耳の中には内耳と呼ばれる器官があり、そのなかの前庭と呼ばれる部分は、前後方向への加速度や回転運動といった

体の重心変化を捉えて反応する器官があります。

これは例えばグルグル回ると回転していることを感じることができますし、車が急発進したり急停車したときにはその衝撃を感じることができますが、

前庭系はこういった回転や加速度を感知するような器官になります。

こういった回転方向の力や加速度の変化に対してはそれなりに体も対応しなければいけないと転んでいまいますので、

前庭系は脳幹を中心として中枢神経系に広く情報を伝達して、眼の動きや手足の筋肉の働きを調整して上手くバランスを取れるように調整をします。

リーチ動作と前庭系と頭頂葉の関係

リーチ動作というのは案外複雑な動作で、

まず気になる方に眼球を動かして目を向け、

その後首や体を然るべき方向へ回転させて、重心を前方へ倒していていきながら、

対象物をしっかり取ることができるように然るべき手の形を作りながら、眼と手を協調させてつかみにかかる

という大変な仕組みになっています。

しかも私達が何かを掴むときというのは必ずしも座って安定している場面だけではなく、

バスケットボールや野球を思い出してもらえばわかるように、体そのものを加速して移動する中でキャッチするという

非常に難しい場面もあります。

長い進化の歴史を考えれば、何かをキャッチするというのは座ってなされる何かではなく、走って獲物を捕まえるようなダイナミックな環境で培われてきたようなもので、

それゆえなにかに手を伸ばす動作、リーチ動作には身体加速度・回転速度を検知する前庭系が関与したのではないかと私自身は考えるのですが、こういった仮説はどのように確かめることができるのでしょうか。

今回取り上げる研究では、

Reaching with the sixth sense: Vestibular contributions to voluntary motor control in the human right parietal cortex.

被験者を回転椅子に載せた状態で目標物にリーチさせる課題を行わせています。

さらにリーチの途中には左右いずれかの方向へ30度の回転を加えて、リーチの起動がどの程度歪むかについて調べています。

しかもそれだけではなく、この回転リーチのさなかに感覚情報の統合に係る頭頂葉の頭頂間溝周辺の10箇所に磁気刺激(経頭蓋磁気刺激:TMS)を加えて脳活動に影響を与え、リーチ起動の歪みにどの程度影響を与えるかについて調べています。

結果を述べると、右頭頂間溝の一部に磁気刺激を加えたときにリーチの起動の歪みが大きくなることが示されており、

この右頭頂間溝の一部(下図のIPS3)がリーチ動作における前庭系の情報処理の取り込みに関わっているのではないかということが述べられています。

リハビリテーション場面でもリーチ訓練等のは頻繁に行われますが、

やはり前庭系を介したダイナミックな要素を取り入れたほうが良いのかなと思ったり、

少し話は飛びますが、歩行練習を行っていると他の身体機能や認知機能にも波及効果があるような印象がありますが、

こういった変化も前庭系と頭頂葉の関係でも考察できるのかなと思いました。

Reichenbach A, Bresciani JP, Bülthoff HH, Thielscher A. Reaching with the sixth sense: Vestibular contributions to voluntary motor control in the human right parietal cortex. Neuroimage. 2016 Jan 1;124(Pt A):869-875. doi: 10.1016/j.neuroimage.2015.09.043. Epub 2015 Sep 28. PMID: 26424179.

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします